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【コラム】マルコ・シウバとレオナルド・ジャルディンは、「新たなジョゼ・モウリーニョ」となり得るのか

「あの発言は本当にナンセンス。おそらくこのクラブは彼にとって大きすぎるのだろう」

2016-17シーズンも佳境に差し掛かり、選手の疲労も溜まる中、ELロフトフ戦後に、マンチェスター・ユナイテッド監督ジョゼ・モウリーニョが口にしたスケジュールへの不満。これがクラブのレジェンド、ロイ・キーンの逆鱗に触れた。

世界一の名監督の1人という名声を不動のものとしたこのジョゼ・モウリーニョは、このところ、その絶対的な求心力を徐々に弱めつつある。2004年に母国ポルトガルの強豪ポルトでヨーロッパ王者に輝き、その後、チェルシー、インテル、レアル・マドリードなど、欧州を代表するビッグクラブをリーグチャンピオンに導いた「スペシャル・ワン」も、今や復活を目論むマンチェスター・ユナイテッドでリーグ5位と低迷し、アレックス・ファーガソン時代の栄光を取り戻す任務を果たせずにいる。

自らが崇拝する英雄に陰りが見え始めたとき、人々がとる行動は2つ。その復活を信じて崇拝を続けるのか、または、それを見限り、新たな拠り所を探すのか。当然、ジョゼ・モウリーニョの絶対性に疑問が噴出したいま、彼に代わる次世代の英雄の出現を望む声は強まっている。

ーーージョゼ・モウリーニョの後継者は誰なのか。

その筆頭候補であったアンドレ・ビラス・ボアスは、プレミアリーグで2度の解任を経験した後は、ロシアのゼニトで監督を務めるなど、欧州フットボール界のメインストリームから離脱。今では中国のクラブ上海上港を率い、「もう1人のスペシャル」と題された本が出版されるほど巨大な期待を浴びたのも今や過去の追憶に。

ジョゼ・モウリーニョの腹心から始まった正統後継者への道のり。先頭をひた走っていたビラス・ボアスが自らコースを外れたいま、あとを追っていた2人のポルトガル人指揮官が揃って先頭に躍り出た。

今季途中からハル・シティを率いるマルコ・シウバ、そして、モナコで3シーズン目を迎えるレオナルド・ジャルディン。ともに、モウリーニョが、かつてボビー・ロブソンのもとでアシスタントコーチを務めたスポルティングを率いた共通点を持つ。マルコ・シウバは、モウリーニョの後を追うかのようにイングランドへ渡り、彼が最も称賛を浴びるプレミアリーグで急速に評価を高めた。レオナルド・ジャルディンは、モウリーニョが2度の王者に輝いたCLの舞台で、ヨーロッパ全土にサプライズを巻き起こしている。今や「ネクスト・モウリーニョ」の名声を手中に収めつつあるこの2人は、果たしてスペシャル・ワンの後継者になる得る人物なのだろうか。

マルコ・シウバは、39歳の若手監督であり、トップチーム監督としてのキャリアはわずか5年。それでも、毎年所属クラブの歴史にその名を刻み込んできた。監督としてのステップアップの速さと、短期間で数々の偉業を成し遂げた実績こそが、マルコ・シウバにジョゼ・モウリーニョとの比較論が止まない最大の理由だろう。

監督1年目には、選手として引退したエストリルをポルトガル2部で優勝に導き、2年目には2部上がりのクラブを1部で5位に押し上げた。エストリルでの最期となった3年目には、クラブ史上最高となるリーグ4位に導き、弱小クラブを3強に比肩するチームに育て上げた。翌年、エストリルの英雄として惜しまれながら、ポルトガルの3強の一角、スポルティングへ。クラブ会長ブルーノ・デ・カルバーリョとの不仲を理由にわずか1年で解任されたが、監督としてのキャリアは4年目ながら、ポルトガル屈指の古豪に7年ぶりのタイトルをもたらした。

ビッグ・イヤーを置き土産にポルトからチェルシーへ巣立ったモウリーニョと同じく、トップチーム監督として5年目となる年に、マルコ・シウバも初めて海を渡った。行き先は、ギリシアのオリンピアコスであった。一見遠回りをしたかに見えたこの決断こそが、マルコ・シウバをジョゼ・モウリーニョへと急速に近づけた。

新指揮官マルコ・シウバ率いるオリンピアコスは、開幕からの勢いそのままに、リーグ17連勝を飾った。その後も、22節に初めて負けるまで、開幕から21試合無敗という偉大な記録を打ち立て、眼を見張るような圧倒的な強さでギリシアリーグを制した。その勢いはヨーロッパの舞台でも変わらず、マルコ・シウバにとって初挑戦となったCLでは、アーセナルとバイエルンらが同居する厳しいグループで善戦。アーセナル戦に至っては、敵地エミレーツで勝利を収め、ギリシアクラブとしては初めてイングランドから勝ち点3を持ち帰った。

そして、監督として6年目の16-17シーズン、プレミアリーグで最下位に低迷していたハル・シティが、ジョゼ・モウリーニョのようにアーセン・ベンゲルを打ち負かしたこのポルトガル人指揮官を、残留のキーマンとして呼び寄せた。監督就任記者会見では早速、ジョゼ・モウリーニョと比較されるも「私はスペシャル・ワンではない。マルコ・シウバだ」と、熱を帯びていた比較論を一蹴した。

母国の若者のプレミアリーグ挑戦を、モウリーニョも陰ながら支えた。未来ある青年への過度な期待を案じ、その共通点を認めながらも、メディアに冷静さを求めた。

「マルコ・シウバにとって、私と比較されるのは良いことではない。またフェアでない。ただ、我々のキャリアの初期に類似点はあるね。どちらもポルトガルの小さなクラブで監督を始め、のちに強豪クラブに行った。彼は素晴らしい姿勢を持った賢い青年だ。ポルトガルでは最も優れた若手監督として知られている。ここプレミアリーグでは困難に直面するだろうが、彼にとっては良い機会となるだろう」

ハル・シティをプレミアリーグ残留へ。イングランド初挑戦となった39歳の監督には、荷が重い難題であった。しかし、エストリル、スポルティング、オリンピアコスで着実に実績を積み上げてきたマルコ・シウバは、自身がこの難題に挑戦するに値する監督であることをその手で証明した。スウォンジーとの一戦を勝利で飾り、幸先の良いデビューを果たすと、続くプレミアリーグ初戦ボーンマス戦も、3-1で納得の勝利。2月にはいきなりビッグクラブとの3連戦が控えていたが、モウリーニョ率いるマンチェスター・ユナイテッドに引き分け、ユルゲン・クロップ率いるリバプールには2-0で完勝した。オリンピアコス時代に下したアーセナルこそ、今回は勝利とはならなかったが、3連敗が妥当であるとみられたこの連戦で勝ち点4をもぎとった。

また、リーグカップ戦の準決勝では、ジョゼ・モウリーニョと直接対決。2戦合計では敗北したものの、セカンドレグでは、ハル・シティに、マンチェスター・ユナイテッドから40年ぶりの勝利をもたらすなど、着実にチームに変革をもたらしている。

モウリーニョの牽制も虚しく、監督就任会見以後も、マルコ・シウバを「ニュー・モウリーニョ」「リトル・モウリーニョ」などと評する声は強まった。ただし、この活躍ぶりに、ジョゼ・モウリーニョは「マルコ・シウバの仕事ぶりには驚いていない。彼が良い監督であり、チームを改善できることは分かっていた」とコメントを残すなど、その評価は本家のお墨付き。現在、ハル・シティは、18位に位置しているが、降格圏脱出まであと勝ち点3差に迫った。契約は今季限りとされているが、マルコ・シウバ本人が「残留にはミラクルを引き寄せる力が必要」と語ったように、一時は最下位に沈んでいたクラブに「大逆転残留」の奇跡をもたらすことができれば、来季もハル・シティを率いるマルコ・シウバの姿を見られるかもしれない。まずはハル・シティをプレミアリーグに残留させること、そして、自らもチームに留まること。この最初の壁を乗り越えたとき、プレミアリーグで「スペシャル・ワン」と称されるなど特別な存在となったジョゼ・モウリーニョへ通ずる道が拓かれるだろう。

視点をフランスに移そう。ジョゼ・モウリーニョが指揮を執った経験のないこの国で、もう1人の「ネクスト・モウリーニョ」が、欧州全土をかき回す台風の目となっている。リーグ・アンで、王者パリ・サンジェルマンを上回り首位に立つモナコ。若いチームを率いるのが、42歳の青年監督レオナルド・ジャルディンだ。

大多数のポルトガル人の若者と同じく、ジョゼ・モウリーニョも一度はプロサッカー選手になることを夢見た。しかし。ジャルディンは違った。父親によると、昔からプロのサッカー監督になることを目指していたようだ。夢を叶えるため、クリスティアーノ・ロナウドの出身地としても有名な故郷マデイラの大学でスポーツ科学を修めた。そして、24歳の頃には早くも監督コースを終え、最年少でレベル4のライセンスを取得し、目標を実現させた。ジャルディンが次に見据えた未来は、モウリーニョも立つ監督としての頂。27歳の頃には、その具体的な道のりを描いていたのかもしれない。カマーシャという地方クラブでトップチーム監督としてひっそりとデビューし、その後は、アベイロ地方のベイラ・マルやポルトガル屈指の強豪ブラガ、初の海外挑戦であったオリンピアコスを経て、2013年に幼き頃より憧れたスポルティングの監督に就任した。当時エストリルを率いたマルコ・シウバがやってくる、ちょうど前年だった。

ブラガを率いた頃から徐々に頭角を現していたジャルディンにとって、スポルティングの監督を務めた1年間はキャリアの転換期となった。現在はサウサンプトンでプレーするセドリック・ソアレスや、マンチェスター・ユナイテッドのマルコス・ローホ、スポルティングの現キャプテンであるアドリエン・シウバやポルトガル代表の中核ウィリアン・カルバーリョ、そしてレスターに所属するイスラム・スリマニなど、現在ヨーロッパ各国で活躍する選手をまとめ上げ、前年7位に沈んだ古豪を2位にまで復興させた。

この活躍ぶりが、大富豪の資金を手にクラブの改革を進めていたモナコの目に留まる。今でこそ「ミラクル・レスター」の立役者として有名となったクラウディオ・ラニエリ監督の後任を探していたモナコは、まだ世界的には名の知れていないジャルディンを大胆にも抜擢。ラダメル・ファルカオにハメス・ロドリゲス、ジョアン・モウティーニョなど、ジャルディンの母国ポルトガルから多くのスター選手を獲得して推し進める大型補強と比べ、微々たる監督人事であった。

しかし今となっては、当時の経営陣の決断にに異を唱えるものはいないことだろう。ジャルディンは、ポルトとインテルでCLを制したジョゼ・モウリーニョの如く、特に欧州の舞台でその名を知らしめた。スポルティング時代と同じく、若手から中堅の選手が構成する勢いのあるチームを作り上げ、モナコでの監督初年度には、モウリーニョが幾度となく舌戦を繰り広げてきたアーセン・ベンゲル率いるアーセナルを敗退に追い込み、自身初となるCLでベスト8に進出した。そして今季は、スペインで「モウリーニョvsグアルディオラ」の一時代を築いたペップ・グアルディオラをもCLの舞台から葬り去った。監督就任当初から手塩にかけてポルトガルを代表する選手にまで育て上げたベルナルド・シウバをチームの中心に据え、マンチェスター・シティとの2戦合計6-6となった激しい打ち合いを制した。ジャルディンが飾った勝利は単なるモナコのサプライズではなく、それまでCLに7度出場し、その全てで少なくとも準々決勝には勝ち残っていたグアルディオラを、初めてベスト16で敗退に追いやる監督になるなど、自身の評価にも箔をつけた。グアルディオラ率いる「最強バルサ」相手にリーガ・エスパニョーラを制したモウリーニョですらなし得なかった並外れた偉業である。

レオナルド・ジャルディンの快進撃は一体どこまで続くのだろうか。奇しくも、ジョゼ・モウリーニョがポルトで奇跡のCL制覇を成し遂げた当時の決勝の相手はモナコであった。ディディエ・デシャン監督に率いられ欧州最強の座を決めるファイナルに駒を進めたクラブの歴史を繰り返し、ポルトの歴史を変えたモウリーニョのように、奇跡のCL優勝を成し遂げたとき、世界は約10年前にポルトの監督としてビッグイヤーに口付けをするジョゼ・モウリーニョの姿を思い起こし、「新たなモウリーニョ」が誕生したと声を荒げることだろう。

ともに、ジョゼ・モウリーニョの後継者レースで先頭を競い合う、マルコ・シウバとレオナルド・ジャルディン。前者がプレミアリーグで、後者がCLの舞台で、それぞれモウリーニョがチェルシーとポルトで成し遂げたのに匹敵する奇跡を起こしたとき、ここ数年間結論の出ない「ネクスト・モウリーニョ」論争に決着がつくことだろう。

(本稿に記述した年齢や順位などの数字は、2017/03/25時点のデータです)

【動画付き】クリスラン、フレイレ、ドゥポワトル。J加入の噂がある3選手をまとめてご紹介します

ポルトガルリーグ所属の3選手にJリーグ移籍の噂が浮上した。ブラガのブラジル人FWクリスランにはベガルタ仙台、シャービスのブラジル人CBレアンドロ・フレイレには清水エスパルスと、それぞれ具体的なクラブ名が挙げられた。また、もし移籍が実現すれば最大の大物となるポルト9番ローラン・ドゥポワトルには、具体的な移籍先は報じられていないが、代理人が日本への移籍の可能性を調査しているとの報道が伝えられた。

ポルトの9番とはいえ、このドゥポワトル含め、3選手は世界的にはまだまだ無名な部類に入る選手である。果たして、来日が噂される彼らはどのような選手なのか。プレー動画とともにその経歴と特徴を紹介していきたい。

クリスラン

クリスランは、1994年生まれ24歳のブラジル人FW。186センチという長身と利き足の左足が特徴だ。母国ブラジルからポルトガルへ初上陸したのは、昨季2015-16シーズンのブラガ。今季2016-17シーズンは、トンデーラへレンタル移籍したが、12試合で1ゴールと振るわず、チームも1部で最下位に。半年でブラガにレンタルバックしても出場機会に恵まれず、ポルトガルで活躍したとは言えない選手である。

しかし、クリスランはブラガの前に所属していた母国ブラジルのペナポレンセではエースとして大活躍。しなやかな身体と長い手脚を活かし、繊細かつ豪快なプレーで得点を量産していた。ゴール前でのポジションに優れ、強烈なシュートを左足で振り抜くだけでなく、長身を活かしたポストプレーやヘディングからのゴールも得意としている。しかし、クリスランの強みはその長身だけではなく、スピードのある飛び出しや、1人で戦況を打開できる突破力など、地上戦で発揮されるものも。まさに、FWとして必要な素質をバランスよく備えており、1人で状況を変えられる強力な外国人選手が目立つJリーグでも、存分に活躍できるだろう。

レアンドロ・フレイレ

レアンドロ・フレイレは、1989年生まれ27歳のブラジル人CB。クリスランと同様に187センチという長身が特徴的だ。ポルトガルへの初上陸は、2010-11シーズンに加入した強豪ビトーリア・ギマラインス。続いて移籍したナシオナルでも、主に控え選手としてプレーしていたが、転機となったのは、昨季2015-16シーズンのアポロン・リマソール(キプロス)移籍。東欧の地でポルトガル人監督ペドロ・エマヌエルに率いられ、44試合で3ゴールと才能を開花させた。その活躍もあり、今季は2部上がりのシャービスへ加入しポルトガルへ復帰。初めてチームの守備の要として認められ、若き名将ジョルジ・シマオン(現ブラガ)のもと、小クラブの7位躍進の立役者となった。

フレイレの武器は、打点の高いヘディング。屈強な身体を活かし、敵の攻撃を跳ね返す力はもちろん、セットプレーでは攻撃面でもチームの得点に貢献する。また、フィード力に優れ、ディフェンスラインから攻撃を組み立てる能力も優れている。その中でも、フレイレ最大の特徴は、守備における粘り強さ。ギリギリのところで脚を投げ出し、相手の攻撃をシャットアウトする迫力は、チームの守備の要と言うに相応しい。加入するJクラブでも、ディフェンスリーダーとしてチームの守備力強化に貢献できるだろう。

ローラン・ドゥポワトル

ローラン・ドゥポワトルは、1988年生まれ28歳のベルギー人FW。クリスランとフレイレを優に超える191センチという身長が最大の特徴だ。ドゥポワトルにとってキャリアのピークとなったのは、ゲンクで過ごした2シーズン。87試合で30ゴールとエースとして得点を量産した。その活躍が認められ、今季2016-17シーズンに鳴り物入りでポルトへ加入。2020年までの長期契約、違約金は4000万ユーロで、与えられた背番号は、ドミンゴス・パシエンシアやベニー・マッカーシー、ラダメル・ファルカオにジャクソン・マルティネスなど、クラブのレジェンドが代々引き継いだエースナンバー9番と、まさにスター待遇であった。

ドゥポワトルのポジションを開けるため、ポルトは前シーズンに獲得したムサ・マレガとソク・ヒョンジョンをレンタルに出し、バンサン・アブバカルからは9番を剥奪し、ベジクタシュへ貸し出した。しかし、彼ら屈強な3選手の役回りを一身に背負うはずだったドゥポワトルは、ポルトガルリーグへの適応に苦しみ、シーズン前半を12試合で2ゴールで終えた。チームを引っ張る若きエース、アンドレ・シウバディオゴ・ジョッタの2人の若手FWの陰に隠れ、スター待遇で加入したベルギー人FWは、他クラブへ出場機会を求める立場に転落してしまったのだった。

ドゥポワトルの特徴は、何と言っても191センチという圧倒的な高さと身体の強さ。相手を背負った場面での強さやヘディングでの得点力は言うまでもなく、地上に落ちたボールを、相手ディフェンスから抜け目なく奪い去る巧みさ・強さも武器である。ただ、Jリーグへの適応問題に関して言えば、ポルトでディオゴ・ジョッタやオリベル・トーレス、オタービオ・モンテイロらが小気味好くパスワークを繋いだ中で、1人異質な存在となったように、日本のサッカーにうまく馴染めるかは、一か八かの賭けとなりそうだ。

以上、Jリーグへの加入が噂されるクリスラン、レアンドロ・フレイレ、ローラン・ドゥポワトルの経歴と特徴を、プレー動画とももに紹介した。ポルトガルリーグから到来することが予想される彼らが、日本のスタジアムで輝く姿を是非とも見てみたいものである。

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冬の移籍市場、日本人のポルトガルリーグ加入なるか。過去の代表スター3名に浮上した噂

2017年を迎え、欧州フットボール界では冬の移籍市場が解禁した。現在、ポルトガルリーグで活躍する日本人選手には、ポルティモネンセの亀倉龍希などがいるが、代表クラスの選手は所属していない。直近では、スポルティングの田中順也やポルティモネンセの金崎夢生など、日本代表級の選手がプレーしていたが、どちらもすでに日本へ帰国している。

この田中順也にスポルティングへの移籍の噂が流れた当時は、ポルトガルの大手メディアの大半がそれを報道した。田中順也のスポルティング移籍は実現したが、ポルトガルでは実は、移籍は実現せずとも日本人選手加入の噂が、ここ2-3年で1年に1-2回程度は報じられている。今回は、日本人の代表スター3選手にかつて浮上したポルトガルリーグ加入の噂を振り返りたい。

宇佐美貴史(ガンバ大阪)

当時ガンバ大阪に所属していた宇佐美貴史にポルト移籍の噂が浮上したのは2015年の夏。Jリーグで16ゴールを挙げた宇佐美が、現スペイン代表監督フレン・ロペテギ率いるポルトへ数時間中に移籍するとの噂が報じられた。ポルトガルリーグ3年連続得点王ジャクソン・マルティネスの後継者としてである。

しかし、本ニュースを報じたのは『MultiDesportos』というマイナーなメディアであり、そのソースにも「日本メディアによると」と記載されており、現地ポルトガル発のニュースではなかった。その信憑性は疑わしく、案の定、宇佐美のポルト移籍は実現しなかった。

長友佑都(インテル)

インテルの長友佑都にベンフィカ移籍の噂が生じたのは、宇佐美のポルト移籍の噂から約1ヶ月後。同じ夏に2人の日本人スターに、ポルトガルの2大クラブへの移籍の噂が流れたのである。

長友はアトレティコ・マドリードへ移籍したギリェルメ・シケイラの後任とのことであった。ポルトガル3大サッカーメディアの一角『Record』がイタリアメディアの報道を引用し、ベンフィカのオファーが実在したことを報じた。しかし、ベンフィカ側のオファーがインテルを納得させるのに十分ではなく、筆者が書いた下記コラムも虚しく、移籍は白紙となった。

【ミニコラム】長友にベンフィカ移籍の可能性。ポルトガル王者へ移籍すべき4つの理由

ハーフナー・マイク(フィテッセ)

最後に紹介するのは、フィテッセに所属していたハーフナー・マイクのベンフィカ移籍の噂。田中順也にスポルティング移籍の報道がされる前の5月に突如浮上していた。フィテッセで得点を量産していたハーフナーには、ナポリも関心を抱いていると報じられていたが、その獲得競争にベンフィカも参戦。オスカル・カルドーソに継ぐストライカーとしてハーフナーを獲得する可能性が浮上していた。しかし、こちらも移籍は実現せず報道は鎮火。その数ヶ月後に、田中順也のスポルティング移籍が実現した。

ここ数年で毎年報じられている日本代表クラスの選手のポルトガルリーグ加入の噂。果たして、この冬も日本人選手がポルトガルメディアを賑わし、はてはポルトガルクラブへの加入が実現させるのだろうか。期待感を持ってこの冬の移籍市場も見守りたい。

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16-17季ポルトガルリーグ、16年の振り返りと17年の注目選手/監督/クラブ

新年2017年を迎え、16-17シーズンのポルトガルリーグもいよいよ折り返しを迎える。今回は2016年のポルトガルリーグを振り返り、新年の注目ポイントを考察したい。

2016年振り返り

2016年のポルトガルリーグは、チームの中心となる若手選手の台頭と、多くのクラブで起きた監督交代が特徴的であった。

クラブの中心を担う若手選手の台頭

2016年は、特に3強クラブで多くの若手選手が頭角を現した。しかも、彼らがチームを引っ張り、ポルトガルリーグを代表する注目選手へと成長した。

首位のベンフィカでは、2年連続リーグMVPで昨季はリーグ得点王に輝いたジョナスの負傷離脱を受け、U-21ポルトガル代表FW20歳のゴンサロ・グエデスが新エースに。また、アトレティコに移籍したニコ・ガイタンの後釜として、フランコ・セルビが、リーグ戦だけでなくCLでも輝きを放った。

2位ポルトは、3年連続リーグ得点王に輝いたジャクソン・マルティネスの後継者探しを、昨15-16季は失敗。しかし、今季よりBチームからトップチームに定着し、いきなり10番を与えられたアンドレ・シウバが、ここまでリーグトップとなる10ゴールをあげるなど、一気にポルトの新エースに。ポルトガル代表のワントップを任されるほどのスタープレーヤーへと変貌した。また、アトレティコからレンタル移籍してきたディオゴ・ジョッタも、アンドレ・シウバと若手2トップを組み、アシストを量産している。

4位に低迷するスポルティングでは、CLレアル戦で世界に衝撃を与えたジェウソン・マルティンスがひとり気を吐いた。この快速ドリブラーは、ポルトのアンドレ・シウバと同じくポルトガル代表にも選ばれ、世界が注目する若手スタープレーヤーへと成長した。

2017年から始まる後半戦も、彼らがリーグの話題を一身に集める活躍をすることだろう。

近年稀に見る大量の監督解任

16-17季の前半戦は、監督にとって近年最も厳しいシーズンとなった。監督交代が行われたクラブは、全体の60%にものぼる18チーム中11チーム。ブラガにジョルジ・シマオンを引き抜かれたシャービス以外の10チームが、成績不振により監督を解任した。

1位ベンフィカ
監督交代なし(ルイ・ビトーリア)
2位ポルト
監督交代なし(ヌーノ・エスピリト・サント)
3位ブラガ
ジョゼ・ペゼイロ→ジョルジ・シマオン
4位スポルティング
監督交代なし(ジョルジ・ジェズス)
5位ビトーリア・ギマラインス
監督交代なし(ペドロ・マルティンス)
6位リオ・アベ
ヌーノ・カプーショ→ルイス・カストロ
7位シャービス
ジョルジ・シマオン→リカルド・ソアレス
8位マリティモ
パウロ・セーザル→ダニエル・ラモス
9位ビトーリア・セトゥバル
監督交代なし(ジョゼ・コウセイロ)
10位ボアビスタ
エルウィン・サンチェス→ミゲウ・レアウ
11位ベレネンセス
フリオ・ベラスケス→キン・マシャード
12位アロウカ
監督交代なし(リト・ビディガル)
13位パソス・デ・フェレイラ
カルロス・ピント→バスコ・セアブラ
14位エストリル
ファビアーノ・ソアレス→ペドロ・ゴメス・カルモーナ
15位フェイレンセ
ジョゼ・モッタ→ヌーノ・マンタ
16位ナシオナル
マヌエル・マシャード→プレドラッグ・ヨカノビッチ
17位モレイレンセ
ペパ→アウグスト・イナーシオ
18位トンデーラ
監督交代なし(プティ)

ご覧の通り、中位から下位のほとんどのクラブは監督交代を決断。しかし、6位リオ・アベのように、監督を替えたクラブの多くはこのショック療法により順位を上げた。後半戦は、監督交代の遅れたナシオナルやモレイレンセも順位を上げたり、逆に現状維持となっているビトーリア・セトゥバルやトンデーラが場合によっては順位を下げたり、上位に浮上できなかったりと、中位から下位のチームが順位を入れ替える混戦が予想される。

2017年の注目選手/監督/クラブ

上述した若手スタープレーヤーの活躍と、中位から下位チームの混戦も、もちろん2017年の注目ポイントだろう。ここでは後半戦のポルトガルリーグを盛り上げるであろう注目の選手、監督、クラブをそれぞれ予想する。

注目選手

ヤシン・ブライミ

クラブ史上最悪となる4試合連続スコアレスドローを演じ、一時はヌーノ・エスピリト・サント監督の解任も噂されたポルト。しかし、同監督に干され気味であったこの昨季のポルトのエースが、オタービオ・モンテイロの負傷離脱を機にスタメンを取り戻すと、得点力が大爆発。ブライミがスタメンを取り戻した5試合では、レスター戦の5得点を含む、14ゴールをチームであげ、4勝1分と高い勝率を取り戻した。今冬の移籍市場で、アーセナルやユベントス、ローマなどからの引き抜きの噂もあるが、もしポルトに残留すれば、チェルシーのイバノビッチを翻弄した昨季のような輝きを再度放ってくれるだろう。

注目監督

ジョルジ・シマオン(ブラガ)

昨季はパソス・デ・フェレイラをリーグ上位の7位に導き、今季も2部上がりのシャービスをサプライズとなる7位に押し上げていた。この40歳の若手監督は、現在国内No.1の若手監督といっても過言ではなく、その手腕が評価され、ジョゼ・ペゼイロを解任した強豪ブラガにシーズン途中ながら引き抜かれた。現在チームはリーグ3位を維持しており、あわよくば2位浮上など、3強体制を崩す活躍が期待できる。

注目クラブ

ブラガ

上述のジョルジ・シマオンが監督就任したリーグ3位のブラガ。低迷する4位スポルティングを暫定で上回っており、この好調を維持し、スポルティングが不調から抜け出すことができなければ、3強体制を打ち崩すことも夢ではない。2位ポルトは調子を上げてきたがブラガとの勝ち点差は2。同6の首位ベンフィカはまだ遠いが、ポルトを超えて2位へと上り詰める目標も可能性としては現実的だ。後半戦は、ジョルジ・シマオン率いるブラガが3強体制を終わらせるのか、ポルトガル屈指の強豪クラブが台風の目となれるかが注目である。

以上、ポルトガルリーグ激動の2016年を振り返り、2017年の注目ポイントを予想した。若手選手の宝庫であるポルトガルリーグの後半戦に、世界のメガクラブも引き続き関心を寄せることだろう。

©FutePor -ふとぽる-

【ミニコラム】柴崎岳よ、ポルトガル2部ポルティモネンセへ行け!3つの理由を論じる

クラブW杯で欧州王者レアル・マドリード相手に衝撃の2ゴールを決め、世界中のメディアで取り上げられる時の人となった鹿島アントラーズMF柴崎岳。自身が希望するリーガ・エスパニョーラのクラブからの関心があったことも報じられるようになってきたが、ふとぽるは、そんな柴崎岳の海外初挑戦の舞台に、ポルトガル2部ポルティモネンセを推薦したい。その理由は以下3点だ。

1.金崎夢生が取り持ち深めた鹿島とポルティモネンセの絆

ポルティモネンセといえば、現在鹿島のエースを務める金崎夢生が、かつて10番を背負ったクラブ。金崎の活躍により、ポルティモネンセは日本サッカーへの関心を高め、また、鹿島アントラーズと良好な関係を築き上げた。実際に、今季はチームのエースストライカーであったファブリシオを鹿島にレンタル移籍させていたし、クラブW杯には、ディレクターである元浦和MFポンテ氏やCEOサンパイオ氏も来日していた。ポルトガルのクラブでは珍しく、鹿島に、そして日本人に理解が深いクラブなのである。

さらに、ポルティモネンセにはブラジル人の父を持つ亀倉龍希が所属していることもメリットになる。初めての海外での生活をともにできる日本人であり、ポルトガル語を話せる亀倉の存在によって、ピッチでのパフォーマンスにも密接に関わる語学面の心配も軽減されるだろう。

ポルティモネンセには、柴崎が初の海外挑戦に集中できる環境が整っているのだ。

2.ポルティモネンセは現在2部で首位で、監督は4年連続で2部クラブを1部に導いている昇格請負人。ポルトガルの3強が目前に

ポルティモネンセは2部所属とはいえ、昨季は昇格の一歩手前であるリーグ4位に輝いた強豪。現在はここまで首位に立ち、1部昇格の最右翼となっている。監督は「昇格請負人」ことビトール・オリベイラ。これまで9クラブを1部に導き、現在は4年連続で2部クラブを昇格させている名将である。もし柴崎がこの冬にポルティモネンセへ移籍すれば、ポルトガル2部の厳しいフィジカルコンタクトを経験した後、来夏からは、強豪ひしめく1部リーグに挑戦できる可能性があるのだ。

参考記事:昇格請負人ビトール・オリベイラ

亀倉所属ポルティモネンセが、9度昇格経験の「昇格王」を新監督に招聘へ

ポルトガル1部といえば、ポルトやベンフィカ、スポルティングなど、欧州のメガクラブが熱視線を寄せる名門が在籍する注目市場。ステップアップを目論む選手にとっては、この上ない登竜門である。1部の下位クラブで活躍した選手は、このポルトガルの3強へ引き抜かれるのがポルトガルリーグの伝統であるため、柴崎も実力と運が味方すれば、来年の冬には早くも、例えばポルトでプレーしていることも可能性としては否定できない。

ポルトガルリーグには優秀な司令塔が不足していることも柴崎にとっては追い風となる。ポルティモネンセが1部にあがり、そこで3強の目に留まる活躍をしさえすれば、パソスでリーグ3位に輝き、翌年ポルトへ移籍した元ポルトガル代表ジョズエや、セトゥバルへのレンタルから復帰後にスポルティングで大爆発し、インテルに羽ばたいた現ポルトガル代表10番ジョアン・マリオらが辿ったキャリアを再現することも可能だ。

3.金崎夢生が体の強さやトランジションの速さを手にし、日本代表に登りつめたリーグ

今でこそ、金崎夢生は相手選手を背負ってもボールを取られない強靭なフィジカルや、奪われた際のトランジションの速さが日本代表にも選ばれる強みと知られるようになったが、それまでは典型的なドリブラータイプだったことは記憶に新しい。筆者は、ポルトガルで2試合ほどポルティモネンセ金崎の試合を生で観戦し、今の金崎夢生の強みは、ポルティモネンセ時代に培われたと感じている。多くの2部リーグがそうであるように、ポルトガル2部もフィジカルコンタクトが非常に激しいリーグであり、柴崎がまだ未熟さを残す、ボール奪取の迫力やボールを奪われた際の切り替えの速さなど、トップ選手になるためには鍛えておくべき弱点を強化できるチャンスが転がっているのだ。しかも、1部に上がれば、その機会はさらに濃厚なものに。ポルティモネンセが1部に昇格すれば、ポルトガルの3強からは終始攻撃の嵐を浴びせられることだろう。中盤で粘って失点に耐え、ボールを奪ったら速攻を仕掛けて得点を素早く奪うという経験から、弱点を強化できるのだ。

以上のように、筆者が柴崎をポルティモネンセへ推薦する理由は、ポルティモネンセが来夏よりポルトガル1部で戦う可能性が高く、ポルトやベンフィカ、ひいては欧州トップレベルの名門クラブに引き抜かれるシナリオもあり得るからだ。もし柴崎がポルトガルリーグで、ポルトのU-21スペイン代表オリベル・トーレスや期待のブラジル人オタービオ・モンテイロ、ベンフィカのポルトガル代表ラファ・シウバや、スポルティングのポルトガル代表アドリエン・シウバらと肩を並べる司令塔であると自身の価値を証明できれば、将来はクラブW杯で惜しくも敗れたレアル・マドリードに、CLの舞台で借りを返すことも夢物語ではない。

クラブW杯での2ゴールで世界への道が急速に拓けた柴崎岳。世界が注目する日本人MFはどのようなキャリアを選択するのだろうか。