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公式戦デビューのポルト中島翔哉。「左」サイドでの出場機会増への鍵は「右」サイドにあり!

CL予選クラスノダール戦で、ポルト加入後初の公式戦出場を飾った中島翔哉。4-2-3-1のトップ下としてスタメンデビューを果たし、前半終盤からは選手交代の影響で右サイドハーフとしてプレーした。

トップ下としてプレーした前半の約30分間は、上々のデビューを飾った。相手の中間ポジションでボールを受けて前を向き、右のヘスス・コローナと左のルイス・ディアスらにテンポよくパスを散らし、チームにリズムを与えていた。しかし、チームとして、両サイドがボールを保持しクロスを上げようとした際に、前線のターゲットはワントップのムサ・マレガのみ。ポルトが得意とする空中戦の勝率がツートップ採用時より見込まれないことから、両サイドは自ら持ち込んでシュートを放つシーンが目立った。10本以上放ったシュートは全て空砲に終わり、一方で、少ないチャンスで3得点をものにしたクラスノダールとの決定機創出の機会の差が顕著に表れた。

中島翔哉のトップ下システムにより、リーグ開幕戦ジウ・ビセンテ戦で課題となったボランチまたはディフェンスラインから前線へのビルドアップが分断された課題は概ね解決した。一方で、低身長の中島がゴール前に待ち構えることが増えるため、空中戦の迫力には欠ける。そんなトレードオフに悩まされる前半だった。

ポルトは、前半途中に守備で後手に回っていたRSBレンゾ・サラビアを下げてゼ・ルイスを投入し、ムサ・マレガとの屈強なツートップ布陣を敷いた。それに伴い、右サイドハーフのヘスス・コローナをRSBに配置した。そのため、トップ下の中島は、後半は主に右サイドハーフとしてプレー。コローナとの連携から右サイドを攻略し、ツートップにクロスを届けるタスクを背負った。

中島の右サイドへの配置転換は、トップ下システムよりもうまく機能しなかったのは否めない。もちろん、相手を引きつけてコローナのスペースを空け、また、自身でもドリブルやパスで推進力を出すことには一定成功していた。しかし、右サイドながらほぼ中央で待ち構えることが多くボールに関与する機会は減り、たまに突如ポジションを替えて得意の左サイドに移る様子も目撃された。このような、右サイドの攻略をほぼコローナ1人に任せるポジジョンをとったのは、監督の指示なのか自身の判断なのかは不明。いずれにせよ、独力での突破力が見込めるコローナだとしても、2人に囲まれた際にはサポートに行く判断をすべきだった。また、肝心のクロスがファーを通り越すなど精度を欠き、結果を焦ってか自身も強引なシュートに持ち込み、決定機を逃すシーンも度々見られた。総じて、ポルトガルメディアの論調がそうであったように、中島の公式戦デビューは、良い面も悪い面、どちらも露出した試合となった。

今後、中島翔哉は試合に出場するとすれば、トップ下か右サイドでの起用が多くなると推察する。RSBは、ジル・ビセンテ戦のウィルソン・マナファ、クラスノダール戦のレンゾ・サラビアともに敗戦の戦犯と言われても仕方がないようなパフォーマンスに終始した。今後は、昨季からオプションとして試し、一定の安定感が証明されているヘスス・コローナが起用されるのではないか。そうすると、右サイドハーフは、最も序列の高いコローナの代わりに、中島が起用される機会も増えるだろう。

中島得意の左サイドは、ここまでコロンビア代表ルイス・ディアスが持ち味を出し、クラスノダール戦では切り込んでの豪快なミドルシュートも決めた。守備面でも、縦へのスピードが圧倒的に早くカウンター対策にもなり、中島がクラスノダール戦の2失点目で、相手選手のカウンタースピードに全く追いつけなかったように、スピードではディアスに一日の長がある。また、守備の取りに行く・行かないの判断も良く、若いうちからコロンビア代表としてプレーしているだけあり、個人能力に加えて、サッカー的な頭の良さも備えていることが明らかになった。このディアスの他に、ジル・ビセンテ戦で絶妙なプレーをしたオタービオも控えるため、左サイドのレギュラー争いはなおも熾烈だろう。

トップ下システムは、前述の通りゴール前での迫力に欠けるため、コンセイサオン監督としては、エクトル・エレーラが退団したことで抱えたビルドアップの課題を解決しながら、ツートップで戦いたいのが本心だろう。

そのため、中島はトップ下システムに期待しすぎることなく、今後右サイドハーフとしてもプレーできるようになる必要があると考える。ポルトのサイドハーフは、オタービオも、コローナも、ディアスも、主力の全員が右も左も遜色なくできる。試合中のポジションチェンジを柔軟にできるため、スタメンから起用されやすい。ジル・ビセンテ戦で、オタービオとコローナの左右を入れ替えたように、右サイドハーフで一旦試合に出ていさえすれば、試合の状況によっては左サイドハーフとしてプレーするチャンスも増えよう。

不慣れなサイドで露呈した課題を改善し、まずは「右」サイドでも試合に出場してアピール機会を増やせるか。すでに序列が決まりつつある得意の「左」サイドで中島翔哉がプレー機会を増やす鍵は、今後起用のチャンスが増えるであろう逆サイドにあるのかもしれない。

【保存版】19-20季、ポルトガル1部全18チームの監督人事を紹介

2018-19シーズンのポルトガルリーグを制したのは、「Bチームの人材」が躍動したベンフィカだった。Bチームから途中就任したブルーノ・ラージュ監督のもと、Bチームから昇格して1年目のジョアン・フェリックスら若手が躍動。シーズン序盤のつまずきを猛烈な勢いで挽回し、首位を独走していたポルトとの熾烈な優勝争いを2年ぶりに制した。

一方のポルトは、CLこそベスト8に進出するも、2連覇を期して臨んだリーグ戦では、ベンフィカ相手にシーズンダブルを許し、タイトルを逃す屈辱。今季は多くの主力選手が退団し、チーム編成も一新する中で王座奪還に挑む。

今季は中島翔哉がカタールからポルトへ、さらには、安西幸輝(ポルティモネンセ)や前田大然(マリティモ)ら若き日本代表世代が中島の成功例の再現を求めてポルトガルへの移籍を決断。中島がポルティモネンセに所属していた昨季よりも、日本におけるポルトガルリーグへの注目度が一層に増すことだろう。新シーズンもベンフィカとポルトを中心にタイトル争いが展開されるであろうポルトガル1部リーグについて、今年も毎年恒例、全18チームの監督名鑑をお届けする。

昨季1位 ベンフィカ:ブルーノ・ラージュ

ブルーノ・ラージュ(続投)

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クラブにジョルジ・ジェズス時代から続くリーグ4連覇(自身2連覇)をもたらしたルイ・ビトーリアをシーズン序盤に途中解任し、Bチームからブルーノ・ラージュを昇格。この大抜擢がベンフィカのシーズンを一変させた。

かのジョゼ・モウリーニョですらポルト優勢と踏んでいた優勝争いを怒涛の連勝で覆し、就任後19181分と驚異的な追い上げを見せ、クラブに2年ぶりのタイトルをもたらした。特にトータルでシーズン103点を叩き出した攻撃陣の躍動は目覚ましく、ナシオナルとの一戦は10-0という衝撃の大勝を飾った。この快進撃は、序盤戦こそ「今季はポルトだろう」と予想していたモウリーニョを、のちに「私が間違っていた」と言わしめるものだった。

今季もクラブは、昨季リーグ戦終盤を無敗で乗り切ったブルーノ・ラージュに指揮を託す。スカッドとしては、2度のリーグ得点王と2年連続の年間MVPなどポルトガルで輝かしいキャリアを積んだジョナスが引退したが、リーグ得点王ハリス・セフェロビッチやランキング3位ラファ・シウバ、アシストキングのピッツィら多くの主力選手が残留。かつては鹿島アントラーズに所属したカイオ・ルーカスもいよいよ今季からチームに合流するなど、既存戦力と新戦力のバランスはよい。インターナショナルチャンピオンズカップでは、ミランやフィオレンティーナなどイタリアの強豪を撃破して優勝を飾り、スポルティングとのスーペルタッサを5-0で完勝するなど、チームの滑り出しは良好だ。監督自身が昨季まで育て上げたジョッタらBチーム出身選手もインパクトを残し、毎年恒例となりつつあるリーグを代表する新星の頭角も期待できる。

リーグ2連覇と昨季は失意に終わった国内カップ戦およびCLでの躍進のためには、トップチームで初めてフルシーズンの指揮を執る監督自身の育成・抜擢の手腕が大きく問われるが、現状チームの出来上がりは極めて順調。今季はこのブルーノ・ラージュが国内のあらゆるタイトル争いをリードすることだろう。

昨季2位 ポルト:セルジオ・コンセイサオン

セルジオ・コンセイサオン(続投)

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古巣ポルトをビトール・ペレイラ期以来5年ぶりのリーグ王者に導いたセルジオ・コンセイサオンだが、2年連続のリーグ優勝を目指した昨季は、ベンフィカにシーズンダブルを許すなど苦難の年に。ベスト8進出と躍進したCLとの両立に苦しみ、終盤はドローが続いて下位クラブから勝ち点を取りこぼした。

それでも、優勝シーズンにジョゼ・モウリーニョの持つクラブ歴代最多勝ち点記録862ポイント多く塗り替えた若き名将への評価は色あせず。心筋梗塞の影響で現役続行が不透明な守護神イケル・カシージャス、守備の要であったエデル・ミリタオン(レアル・マドリード)とフェリプ(アトレティコ・マドリード)、豊富な運動量で長らくチームを支えていたエクトル・エレーラ(アトレティコ・マドリード)、圧倒的な個人技でアクセントを加えていたヤシン・ブライミ(アル・ラーヤン)ら、主力選手が大量に流出し変革期を迎えるチームの再建に挑む。

今季もクラブ伝統の4-3-3と監督が得意とする4-4-2システムを使い分け、手堅く勝負強いサッカーが志向されるだろう。タイトル奪還のためには、CL予選アウェイのクラスノダール戦ではベンチ外となった中島翔哉やレンソ・サラビアら、新戦力の躍動が不可欠。多くのメンバーが入れ替わった今季の成績は、彼ら新戦力のパフォーマンスに直結するため、コンセイサオンのチーム作りには序盤戦から注目が集まる。

昨季3位 スポルティング:マルセル・カイザー

マルセル・カイザー(続投)

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ポルティモネンセ相手に4-2と破れた直後、スポルティングは早々に手を打った。新監督として招聘したジョゼ・ペゼイロは、大方の予想通り平凡な成績に甘んじ、不名誉な「ポルトガル1部リーグ監督交代第1号」となってしまった。

この迅速な判断が吉となり、オランダ人新監督マルセル・カイザーのもとチームは何とか立て直し、リーグ戦は3位と最低限の結果をマーク。カップ戦では、リーグカップとポルトガルカップの2冠に輝き、スーペルタッサとポルトガルカップを戴冠した2007-08シーズンぶりの2タイトルを獲得するなど、近年稀に見る好成績を残した。ただやはり、何としても手中に収めたいのは、2001-02シーズン以来となるリーグタイトルだろう。

カイザーが率いたシーズン後半は、リーグ戦9連勝と怒涛の追い上げを見せ、来季への期待感をにおわせた。ポルト時代のフッキ、ベンフィカで引退を発表したジョナスに続いて、2年連続リーグ年間MVPに輝き、MFながらシーズン32ゴールを記録してアレックス(当時フェネルバフチェ)が保持していたヨーロッパMF歴代最多得点記録を更新するなど、リーグを代表するアタッカーとして君臨したブルーノ・フェルナンデスの移籍動向は気になるところだが、いずれにせよ、20年ぶりのリーグ制覇のためには、この絶対エースに依存しないチーム作りが必要だ。

昨季4位 ブラガ:リカルド・サー・ピント

アベル・フェレイラ(今季:PAOK)

リカルド・サー・ピント(前:レギア・ワルシャワ)

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2017-18シーズンにブラガの歴史上最も多くの勝ち点(75)を稼いだアベル・フェレイラは、昨季もチームを「ポルトガルの4強」の地位にキープさせ、最低限のミッションは達成。2シーズンにわたり安定的な結果を残した手腕が評価され、自身の監督キャリアでは初となる海外挑戦のため、ギリシアのPAOKへと旅立った。

新監督には、ギリシアやベルギーなど国外中位リーグでの実績が豊富なリカルド・サー・ピントを招聘。ポルトガルでの指揮は2015-16シーズン以来となるが、国内での実績は正直なところ乏しい。クラブ史上最高の監督となったアベル・フェレイラの後釜として4強の座を死守できるか。監督にとってもクラブにとっても、試練の1年を迎えるだろう。

昨季5位 ビトーリア・ギマラインス:イボ・ビエイラ

ルイス・カストロ(今季:シャフタール)

イボ・ビエイラ(前:モレイレンセ)

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ビトーリア・ギマラインスをリーグ5位に導いたルイス・カストロは、パウロ・フォンセッカ監督をローマに差し出したウクライナ王者シャフタールの監督に抜擢された。ルイス・カストロが、フォンセッカの後任として監督就任するのは、同監督がポルトで途中解任され、自身がBチームから昇格した2013-14シーズンを想起させる。

後任には、モレイレンセをクラブ史上最高となるリーグ6位に大躍進させたイボ・ビエイラを招聘。43歳の青年監督と単年契約を締結した。ポルト北部ミーニョ地方のライバル関係にあるブラガも、監督を海外リーグに引き抜かれ変化の時期を迎える今季、天敵をリーグ4位の座から引きづり下ろすには絶好のチャンスだ。

昨季6位 モレイレンセ:ビトール・カンペロス

イボ・ビエイラ(今季:ギマラインス)

ビートル・カンペロス(前:ギマラインスB)

2017-18シーズンには、マルコ・シウバが一時代を築いたエストリルを2部に降格させてしまったイボ・ビエイラだが、昨季はモレイレンセでクラブ史上最高の成績を残し、見事に名誉挽回。ポルトガル屈指の強豪ビトーリア・ギマラインスに引き抜かれた。

クラブは後任としてビートル・カンペロスと契約。同監督にとっては、2017-18シーズンにギマラインスBを退団して以来の現場復帰となる。1部リーグでのトップチーム監督経験は、同シーズンにペドロ・マルティンスが解任され後任のジョゼ・ペゼイロが決まるまでの暫定監督として1試合を務めたのみ。経験の浅い監督に率いられる今季、万年降格圏のクラブにとっては、再び順位表の底と睨み合う厳しい1年となるだろう。

昨季7位 リオ・アベ:カルロス・カルバリャウ

ダニエル・ラモス(今季:未定)

カルロス・カルバリャウ(前:スウォンジー)

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サウジアラビアのアル・タアーウンを経て監督就任したジョゼ・ゴメスは、大方の予想通り早々に解任。クラブは、こちらもシャービスで途中解任の憂き目にあったダニエル・ラモスを招聘し、何とか一桁順位はキープした。功労者であるダニエル・ラモスは契約延長せず退任したが、新監督として大物指揮官を抜擢した。

近年はその監督輩出力に優れるリオ・アベ。ヌーノ・エスピリト・サント(ウルバーハンプトン)、ペドロ・マルティンス(オリンピアコス)、そしてミゲウ・カルドーゾ(AEK)。リオ・アベ経由で海外リーグに監督を輸出するケースは、ポルトガルにおける一種のトレンドとなりつつあったが、今季は監督を逆輸入。プレミアリーグなど海外での実績が豊富な名将カルロス・カルバリャウを母国に呼び戻した。

53歳のベテラン監督は、2018-19にプレミアのスウォンジーを退任して以来となる現場復帰。スウォンジー以前には、トルコのベシクタシュやイングランドチャンピオンシップのシェイフィールド・ウェンズディなどで監督を歴任してきた。ポルトガルクラブを率いるのは、2009-10シーズンにスポルティングの監督を務めて以来。自身にとっても、主要タイトルには2007-08シーズンにビトーリア・セトゥバルでリーグカップを戴冠して以来見放されている。

10年ぶりとなる母国ポルトガルへの復帰。海外での経験を還元し、チームをEL圏およびカップ戦タイトル獲得に導くことが使命だろう。それを期待させるに十分な経験値は持ち合わせている。

昨季8位 ボアビスタ:リト・ビディガル

リト・ビディガル(続投)

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ポルトガル期待の若手監督のひとりジョルジ・シマオンはシーズン途中に解任。同監督にとって、ベレネンセス、パソス、シャービスなど中小クラブを度々上位に押し上げてきた成功サイクルは、強豪ブラガに引き抜かれ・その年に途中解任されて以来、なぜか狂い気味。ブラガ時代に続き、シーズン途中で無念の退任となってしまった。

クラブは、昨季途中に招聘したリト・ビディガルに今季もチームを託す。いまや3部相当ポルトガル選手権まで降格してしまったアロウカ時代には、この弱小クラブを5位に導きELでの経験も積んだ監督。リーグ優勝経験のある5クラブの一角として、そろそろ古豪復活を実現させたい。

昨季9位 ベレネンセス:ジョルジ・シラス

ジョルジ・シラス(続投)

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こちらもボアビスタ同様、1部リーグ優勝経験のある5クラブの一角を成す古豪。昨季は近代化を推し進めんと、ポルトガルでは初のケースとなる前衛的なクラブロゴへの刷新に踏み切った。

監督としては、2016-17年に現役引退して以来チームの指揮を任せているジョルジ・シラスが続投。古風なクラブイメージの刷新を主導する旗頭として、就任してはや4年目となる今季、そろそろ「古豪」の呪縛から抜け出すのに一躍買うような結果を残したい。

昨季10位 サンタ・クラーラ:ジョアン・エンリケス

ジョアン・エンリケス(続投)

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2018-19シーズンのポルトガルリーグにとって、サプライズのひとつはサンタ・クラーラの躍進であった。アソーレス諸島に本拠地を置くクラブは、同じ島国クラブ、マデイラ島のナシオナルとともに、昇格組として1部リーグに挑戦。元ポルトガル代表MFコスティーニャに率いられたナシオナルが1年での降格を強いられるなか、サンタ・クラーラは降格圏はおろか一桁順位にあと一歩まで迫る快進撃を見せた。

この実績が評価されたジョアン・エンリケスは、国内屈指の強豪ビトーリア・ギマラインスからの関心も伝えられるなか、今季はクラブへの残留を決断。昨季の快進撃がフロックでないことを証明し、来季以降の飛躍に繋げたい。

昨季11位 マリティモ:ヌーノ・マンタ

プティ(今季:未定)

ヌーノ・マンタ(前:フェイレンセ)

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オランダでの指導経験が豊富な異色のキャリアを持つクラウディオ・ブラガは途中解任。クラブは近年ピンチヒッターの名手となりつつあるプティに助けを請うた。

昨季は無事に残留を果たしたクラブは、契約満了によりプティの退任を発表し、新たにポルトガル国内有数の若手監督ヌーノ・マンタを招聘。しかし、プレシーズンが始まるとプティが練習場に現れ「まだ契約は残っている」と主張。平行線をたどる両者の争いは、終いには裁判沙汰となり、現在も一件落着とはいかないような状況だ。

それでも、新監督がヌーノ・マンタであることに変わりはない。2010-11シーズンにフェイレンセのユース監督に就任して以来、監督として全てのキャリアを同クラブに捧げてきた。2016-17シーズンには、奇しくも今季から率いることとなったマリティモを相手にジョゼ・モッタ監督が敗北・途中解任され、その後任として初のトップチーム監督に就任。最終的には、弱小クラブをリーグ8位へと躍進させ、ポルトガル国内屈指の若手監督として注目を集めた。昨季は愛するクラブで成績不振に陥り無念の途中交代となったが、その手腕への評価は色あせず。上位返り咲きを狙うマリティモと2年契約を締結した。

監督自身にとってもクラブにとっても、今年は名誉挽回を期する勝負の1年。ヌーノ・マンタはここで突出できれば、さらなる国内強豪クラブへのキャリアも拓けるだろう。そのチームの一員として、松本山雅から期限付き移籍で加入した前田大然の活躍にも期待がかかる。

昨季12位 ポルティモネンセ:アントニオ・フォーリャ

アントニオ・フォーリャ(続投)

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ビトール・オリベイラが率いた一昨季に続いて、再び台風の目としてリーグを席巻した。新エースナンバー10番を着用した中島翔哉や、かつてのポルトガルリーグ3年連続得点王ジャクソン・マルティネスらポルトガルリーグを代表するスター選手が各々の個性を存分に発揮。ベンフィカとスポルティングを下し、それぞれルイ・ビトーリアとジョゼ・ペゼイロの2人の指揮官を途中解任に追い込むなど、ビッグサプライズを度々演じる1年を過ごした。

新シーズンもチーム得点王ジャクソン・マルティネスを中心に据え、サイドを起点に素早く敵陣営を切り裂く攻め筋は、ポルトガルリーグで猛威を振るうだろう。プレシーズンから試合に絡んでいる安西幸輝もその一役を担うはずだ。昨季はLSBのウィルソン・マナファがシーズン途中でポルトへ移籍したように、安西にとっても半年間の活躍次第では、さらなるビッグクラブへの道も拓ける。昨季後半からメンバー入りの機会が増えた権田修一が正GKのポジションを奪えるかにも注目だ。

昨季13位 ビトーリア・セトゥバル:サンドロ・メンデス

サンドロ・メンデス(続投)

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昨季途中にアンゴラ国籍のリト・ビディガルからバトンを継いだカーボベルデ国籍のサンドロ・メンデスが今季も続投。同監督は、選手としても、ここセトゥバルで育成時代を過ごし、プロとして10年以上も在籍。引退後とクラブにとどまりユースチームのコーチとしてキャリアを積み重ねた、純血のSadinho(セトゥバルの愛称)だ。自身初となる1部トップチームをシーズン開幕から指揮する今季、愛するクラブを上位に導けるか。クラブの功労者が成績不振で途中解任される様はサポーターも見たくはない。

昨季14位 アービス:アウグスト・イナーシオ

アウグスト・イナーシオ(続投)

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前年にスポルティングとの決勝のすえポルトガルカップを戴冠し、アービスに史上初の主要タイトルをもたらしたジョゼ・モッタと、クラブ首脳陣は降格を避けるためやむなく決別。同監督は公式声明で敬意を表され勇退する形でチームを去った。

今季は、昨季シーズン途中から監督を務めるアウグスト・イナーシオが続投。ギマラインスやマリティモなど国内クラブだけでなく、エジプト、アンゴラ、ギリシア、ルーマニア、イランなど国外での指揮、またスポルティングでジェネラルディレクターを務めるなど、ピッチ内外における経験豊かな64歳の老将にチームを託す。

昨季15位 トンデーラ:ナチョ・ゴンザレス

ペパ(今季:未定)

ナチョ・ゴンザレス(前:デポルティボ)

トンデーラの歴史に名を刻んだ指揮官がついに退任。クラブを最終節に1部残留に導くこと2回、2017-18シーズンには史上最高順位となる11位に押し上げたペパの退団が決定した。

新任には、スペイン人のナチョ・ゴンザレスを抜擢。スペイン国内のみで監督としてのキャリアを積んできた52歳の同監督にとって、同じイベリア半島の隣国といえど初の国外挑戦となる。ただ、トンデーラは昨季も紙一重で残留を達成した弱小クラブ。今季も1部残留が現実的な目標だろう。

昨季21位 パソス・デ・フェレイラ:フィロー

ビトール・オリベイラ(今季:ジウ・ビセンテ)

フィロー(前:コビリャン)

「ポルトガルの昇格王」ことビトール・オリベイラに率いられたパソス・デ・フェレイラは、無事に1年での1部復帰を達成。自身11度目、ポルティモネンセで1部リーグを戦った2017-18シーズンを除くと、2012-13シーズンから6シーズン連続でのミッションを成功させてお役御免となった。

新監督には、現役時代にパソスでCBとしてプレーした経歴を持つフィローを招聘。監督自身にとって、ポルトガル1部リーグで指揮を執るのは初。昨季は2部コビリャンを率いてリーグ6位と何とも言えない成績に終わっていた。かつてはパウロ・フォンセッカ現ローマ監督のもとリーグ3位に輝いたことのある新興クラブの一角なだけに、1年での降格だけは何としても避けたいところだ。

昨季22位 ファマリカオン:ジョゼ・ペドロ・ソウザ

カルロス・ピント(今季:レイソインス)

ジョゼ・ペドロ・ソウザ(前:エバートンアシスタントコーチ)

クラブにとって四半世紀ぶりとなる1部昇格を置き土産に、カルロス・ピント監督は2部レイソインスへ移籍。日章学園高校時代には選手権で優秀選手に選ばれたこともある菊池禎晃が今季よりプレーするクラブで、再び1部昇格に挑む。

新監督ジョゼ・ペドロ・ソウザは、マルコ・シウバの懐刀と言える存在。同監督が現役引退して監督就任したエストリル時代から、スポルティング、オリンピアコス、そしてハル・シティ、ワトフォード、エバートンとプレミアリーグでもアシスタントコーチを務めてきた。ファマリカオンには2009-10シーズンにアシスタントコーチとして在籍した過去があり、古巣復帰が実現する形となった。

マルコ・シウバは、エストリルで2部優勝を飾った翌年から、2年連続でクラブを15位以上に導いたことで、わずか3シーズンで2部監督から名門スポルティングの監督に到達した。恩師のシンデレラストーリーを再現できるか。

昨季3部 ジウ・ビセンテ:ビトール・オリベイラ

ナンディーニョ(今季:未定)

ビトール・オリベイラ(前:パソス・デ・フェレイラ)

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昨季は3部相当ポルトガル選手権を戦っていたジウ・ビセンテ。2006年にポルトガルリーグ規定に抵触する選手起用をしたため勝ち点を剥奪され1部から2部に降格していたが、調停のすえ今季より再び1部に挑む形となった。

そんなクラブを新たに率いるのは、前述の「昇格王」ビトール・オリベイラ。久々の1部挑戦となった2017-18シーズンにはポルティモネンセを率いてリーグを席巻しただけに、今季もダークホース候補として注目だろう。ただし、3部から1部に一段飛ばしでステップアップしただけに、現有戦力でどこまで戦えるか。ポルティモネンセ時代にも限られた戦力で格上の相手を破ってきた監督の自身手腕が大きく問われる。

以上、2019-20シーズンのポルトガル1部リーグを戦う全18チームの監督人事を紹介した。中島翔哉、安西幸輝、権田修一、前田大然ら日本代表選手の活躍ぶりを見るかたわらで、欧州のサッカーシーンで将来中核を担うであろう彼ら未来の名将候補にもぜひ刮目いただきたい。

ポルトっていまどんな感じ?中島翔哉は活躍できるの?ポルティスタの私が気になる疑問に答えます。

私とポルトとの出会いは、若きジョゼ・モウリーニョが、アレックス・ファーガソン率いるマンチェスター・ユナイテッドと戦ったあの伝説の一戦です。ポルトが勝ち越しゴールを決めた瞬間、モウリーニョが我を忘れてタッチラインを爆走したあのビクトリーラン。生では見ていなかったのですが、何かの映像で記憶しており、それがいまのポルトガルへの情熱に至ります。

本格的に試合を見出したのがポルトガルに留学していた2013-14シーズン。それからは帰国後も、定期的にポルトの試合はフォローしています。ポルトに1年間住んでいた頃には、クラブのソシオになり、ドラガオン・スタジアムの徒歩圏内に住み、毎週スタジアムに足を運んでいたものです。なので、日本人の中では、まあまあポルトについて詳しい方なのではないかと自負しております。

そんな愛するポルトに、この度日本人が加わりました。ポルティモネンセで大ブレイクし、なぜか一度カタールを挟んでポルトガルに戻ってきた中島翔哉くんです。もちろん日本人の加入はポルティスタの私にとっても歴史的な大事件で喜ばしいことなのですが、一方で、日本人選手がこのビッグクラブで通用するのかという心配も当然感じるところです。

この記事を読んでくださっている皆様は、日本代表、中島翔哉、ポルト、このどれかに少なからず興味がある方々かと思います。だからこそ、同じような疑問を抱えている方も少なくないのではないでしょうか。

果たしていまのポルトはどんな感じなのか、その中で中島翔哉は活躍できるのか、ポルトを長らく追っているものとして、少し考えてみたいと思います。

ポルトの現在地

まずいまのポルトはどんな感じなのか。一言で言えば「いちサイクルが終わり迎える転換期」でしょう。

昨年はリーグ2位に甘んじましたが、CLでは優勝したリバプールに敗れることになるベスト8まで進みました。正直、グループステージ敗退やベスト16敗退が多いポルトガル勢にとっては大健闘です。その前年には、5年ぶりにリーグ優勝を果たしました。いまもチームを率いるセルジオ・コンセイサオン監督は、モウリーニョが保持していたクラブ歴代最多勝ち点記録を塗り替えました。つまり、クラブ史上最も勝ち点を稼いだ、歴代で最も勝負強いチームだったのです。あのフッキやファルカオ、ハメス・ロドリゲス、ジョアン・モウティーニョらがアンドレ・ビラス・ボアス監督のもとEL含む4冠を達成した2010-11以来でしょう、これほど強いポルトを見たのは。

そんな黄金世代が、今年大解体されてしまいました。GKイケル・カシージャスは心筋梗塞の影響で現役続行が不透明な状況。守備の要であった2人のブラジル人、エデル・ミリタオンはレアル、フェリプはアトレティコの、それぞれ隣国の首都クラブに引き抜かれ、そこにキャプテンであるエクトル・エレーラもついていく始末。絶対的チャンスメーカーのヤシン・ブライミについては、毎年引き抜かれる詐欺に遭い、ついに契約満了で詐欺が真に。アフリカネーションズカップで怪我をしていまは無所属ですが、ポルトにはもう戻りません。彼らはまさにこのコンセイサオン時代を彩った黄金の主軸メンバー。当然、彼らの退団がチームにとって大打撃であることは言うまでもありません。

そんな状況下でポルトに加入したのが、日本代表の中島翔哉くんというわけです。ブライミの後継者と期待され、同じ背番号8番を託されました。そして、念には念を、ポルトは同ポジションにコロンビア代表ルイス・ディアスも補強して、熾烈なレギュラー争いが起こる環境を意図的に作り出しました。また、ミリタオンが務めた右SBには、こちらも代表選手アルゼンチン人のレンゾ・サラビアを獲得。多くの主軸が抜けた穴を、彼らよりも将来性豊かな若き代表選手で補い、走り出したのが今シーズン、という状況です。

中島翔哉の可能性

当然、中島翔哉くんには、ブライミのように左サイドをドリブルで八つ裂きにし、前線に控える屈強な味方FWのゴールをお膳立て、自らも相手ゴールを脅かし、時には相手のカウンターアタックを猛追して汗を掻く、ゴール前に敷くブロックの一員になる、そんな役割が期待されるはずです。そう、特に守備面はポルティモネンセ時代とは全く違う役割を。

今季もセルジオ・コンセイサオン監督は4-4-2と4-3-3を併用して長いシーズンを戦うことでしょう。下記が個人的に予想する新シーズンのスタメンです。

<予想スタメン>
(斜線で選手を区切ったポジションは、現状同率想定でレギュラーの予測は困難)

4-4-2
GK バナー
RSB レンゾ・サラビア
CB ぺぺ
CB ディオゴ・レイテ/イバン・マルカーノ
LSB アレックス・テレス
CMF ダニーロ・ペレイラ
CMF オリベル・トーレス/セルジオ・オリベイラ
RMF ヘスス・コローナ
LMF オタービオ・モンテイロ/中島翔哉/ルイス・ディアス
CF チキーニョ・ソアレス
CF バンサン・アブバカル/ゼ・ルイス

4-3-3
GK バナー
RSB レンゾ・サラビア
CB ぺぺ
CB ディオゴ・レイテ/イバン・マルカーノ
LSB アレックス・テレス
DMF ダニーロ・ペレイラ
CMF オリベル・トーレス
CMF オタービオ・モンテイロ
RWG ヘスス・コローナ
LWG 中島翔哉/ルイス・ディアス
CF バンサン・アブバカル/チキーニョ・ソアレス

※なお、イケル・カシージャスは現役引退が有力視、ムサ・マレガはプレミアリーグ移籍が有力視されているため、上記には含んでいません。

おそらくGKがバナーでは壊滅するため、何としてもカシージャスの後釜は移籍ウィンドウ閉幕までに補強するはずです。
そして、どちらのシステムでも変わらない4バックは、おそらくこれが有力。ローマから復帰したマルカーノに、若手ディオゴ・レイテがどこまで食らいつけるか。

肝心なのは、4-4-2と4-3-3のMFの構成、もっと言うと、現在ポルトの左サイドアタッカーで最も序列の高いオタービオが、ウインガーとして使われるか、インサイドハーフとして使われるか。それによって、中島翔哉くんのスタメン争いの熾烈度が大きく変わってくるでしょう。

オタービオは非常に器用な選手です。昨季も2トップ採用時には、ヤシン・ブライミを差し置いてLMFのスタメンを張ることも多く、3トップ採用時には、インサイドハーフに据えられて、LWGにブライミまたはムサ・マレガを置く攻撃布陣のオプションも作り出せる、1家に1台欲しいキープレイヤーです。

コンセイサオンは対戦相手に応じてシステムを使い分けます。中島翔哉くんは、4-4-2の場合はオタービオと新加入コロンビア代表の若手FWルイス・ディアスの3人でLMFのポジションを争い、4-3-3の場合はディアスとLWGをめぐり一騎打ちといったところでしょうか。なお、もしムサ・マレガが残留した場合、本来ワントップの彼をLWGに据える荒技もオプションとしては残ります。

このように、ポジション争いとしては、基本的にはコロンビア代表の新加入ルイス・ディアスとの競争がベースにあり、そこにチームの要オタービオがどこまで関わってくるか、というのが概観かと思います。果たして、中島翔哉くんはそんなポルトの中で活躍することができるのでしょうか。

結論としては「攻撃は周りを使う判断をよく、守備は味方との連動。チームのいちピースとして約束事を守れば、十分に試合に使われ、あの個性があれば活躍できる」でしょう。

サッカーダイジェストさんにこんな記事が載っていました。セルジオ・コンセイサオンは中島翔哉にとって「決して相性がいい監督とは言えないかもしれない」とのことです。その理由として「規律とハードワーク」を「ことさら要求」する、オリベル・トーレスのように「守備に貢献できない選手は評価されない」と述べられています。

「決して相性がいい監督とは言えないかもしれない」とは、いろんな炎上リスクを想定して相当マイルドにした表現になっていますが、結局明確な立場をとるなら「守備ができない選手は使わない監督であり、中島翔哉は守備できないから相性悪いよ」ってことなのでしょう。まあ総論間違ってはいないのですが、ざくっと「守備ができないから相性悪い」と言ってしまうことには正直違和感があります。
(そもそも、本職がトップ下のオリベルがセントラルハーフの守備をできないことと、サイドアタッカーがサイドアタッカーの守備ができないことも、前提が違いすぎて一律に比較できないです)

たしかにセルジオ・コンセイサオン監督は、守備ができない選手は使いません。しかしそれは「ことさら要求」しているわけでもなんでもなく、一般的なヨーロッパの監督が求めるそれです。コンセイサオンの守備の要求に応えられない選手は、ヨーロッパのどの中規模以上のクラブに行っても活躍できないのではないかと思います。まず明確に示しておきたいのは、「コンセイサオンが求める守備とは、ヨーロッパで求められる一般基準の守備である」ことです。相手との関係性から適切に判断されたポジショニング、味方と連動してはめる誘導、前進・後退の判断、1対1で奪い切る能力、などなどであり、このようなヨーロッパで活躍するには一般的に備えてなくてはならない守備の最低基準を、コンセイサオンも全選手に求めているというだけです。つまり、何も特別な守備力が求められているわけではなく、中島翔哉くんとの「相性」でも何もないわけです。

なんなら、攻撃の観点から言えば、かなり相性の良い監督です。コンセイサオン率いるポルトにおいて、戦術兵器となっているのは左SBのアレックス・テレスです。3トップだろうと2トップだろうと、彼が大外レーンを陣取り、左サイドのアタッカーを追い越して高精度クロスを上げ、それにムサ・マレガやチキーニョ・ソアレスら空中戦最強の肉弾兵が合わせる形は、ポルトの黄金パターンです。

加えて、4-4-2を採用する際には、ポルトのFW陣は前線で構えたいタイプが多く、1列目と3列目には広大なスペースが空きがち。昨年まではここをエクトル・エレーラが圧倒的な運動量で埋めていましたが、今季代わりとなるオリベル・トーレスにはそこまでの機動力は見込めません。

大外はアレックス・テレスが配置する、1列目と3列目の空間が開く。この2つの条件が揃うとどうなるか。中島翔哉くんの大好物なカットインができるスペースが空きます。彼は現状では、このようなシーンにおいて、カットインをして強引にシュートまで持ち込む傾向にありますが、アレックス・テレスを有効に使う・使わないの判断を適切にして相手を混乱させ、自らのプレー選択の幅を広げる判断が磨かれると、コンセイサオンが彼を使わざるを得ないくらいの得点貢献はできるはずです。

このように、攻撃面では彼の価値が出しやすいチームの全体設計になっています。ただし、カウンターを受けるリスクやアレックス・テレスに預けたときの攻撃の破壊力を考慮したうえで、中島翔哉くんがベストな選択肢を判断・実際に体現できるか。ここだけは攻撃面においても懸念点ではあります。ベタ引きでカウンター一本を狙ってくるチームが多いポルトガルリーグでは特に。

一方の守備。これはコンセイサオン監督との相性どうこうではなく、ポルトの守備戦術を構成する一員として、いち監督から求められる連動ができるかどうかのみです。そして、ポルティモネンセ時代には攻め残り要員としてある種免除されていた守備を、ポルトに来ていきなりできるのかという部分は正直心配です。

ここで大まかなポルトの守備原則をおさらいしましょう。昨季、CLリバプール戦を前に下記のコラムを書かせていただきました。そこに書いたのは、主に下記の守備原則です。

・アタッキングサードでは、FWとWG/SMFが相手ディフェンスラインにプレッシャーをかけて、ロングボールを蹴らせて回収する
・ミドルサードを突破されディフェンシブサードに侵入されると、撤退して守備ブロックを形成する

WGもしくはSMFを任されるであろう中島翔哉くんには、このような相手をはめるポジショニングや前進・撤退の判断を、90分間を通じて、相手選手を見ながら味方と連動して体現し続けないといけません。加えて、前述の通り、彼の後ろにつけるアレックス・テレスは攻撃に持ち味のある選手です。(ポルトガルリーグのアシストランキングで上位常連) 当然、強豪ポルトに一矢報いようとする、または宿命のライバルの撃退に燃えるその他全17チームは、ここをカウンターの起点と利用することは言うまでもありません。カウンターに備えバランスを考慮したポジションを取り、実際にカウンターを食らった際には、自分がどんなに攻め疲れていようと、猛烈に守備に戻らないといけません。上記ができない選手を、セルジオ・コンセイサオンは「使わない」というわけです。

徒然と書きすぎたのでここでまとめます。

攻撃時には、1列目と3列目のスペースにカットインで侵入した際、周囲を使う判断を含む最良のプレー選択。(ちなみに、ポルトファンはボールを持ちすぎてカウンターをくらう選手には、Passa a bola, caralho! (パス出せよクソ野郎!)と容赦ないです。あのリカルド・クアレスマもよく罵られていました)
そして守備時には、チームの守備戦術に連動した判断とポジショニングを90分間体現し続ける能力と、カウンターに備えるバランス。

不思議ですね。中島翔哉くんに足りない能力が、ポルトではちょうど求められます。弱点を克服できるかできないか、簡単に言ってしまえば、それこそが彼がポルトで試合に出場し続け、活躍できる条件であると考えます。

彼はよく言います。「サッカーを楽しむ」と。彼の中で楽しむとはどういう定義なのかは推し量れませんが、私個人の考えでは「弱点を認識して克服するプロセスを経て選手として一段上のステージに登り、世界でもトップレベルのタレントが揃うポルトというメガクラブにおいて、チームの一員として活躍する」こと。これを体現することが「サッカーを楽しむ」ということなのではないでしょうか。ぜひ、彼が言う「楽しむ」とはこのことであることを願い、ポルトに迎え入れられた初の日本人を、同じ日本人としてその活躍に期待したいと思います。

プレースキックの名手!名古屋グランパスが獲得したリオ・アベMFジョアン・シミッチについてご紹介

名古屋グランパスが、アトランタからポルトガル1部リオ・アベにレンタルされていたブラジル人MFジョアン・シミッチを完全移籍で獲得したことを発表した。

現在25歳のジョアン・シミッチは、183センチの長身セントラルMF。名前の表記は「João Schimidt」であり、「ジョアン・シュミット」と読むのが自然のように見えるが、あくまでもポルトガル語発音に則り、登録名は「ジョアン・シミッチ」となった。

シミッチはユース年代よりブラジルの名門サンパウロでプレーし、2015年にはポルトガル1部ビトーリア・セトゥバルにレンタルされた。かつてのポルトの英雄ドミンゴス・パシエンシア監督率いるチームの中心選手として公式戦34試合に出場し、8ゴールを記録するなど確かな実績を残した。その後、サンパウロ復帰、アトランタ移籍を経て、2018-19シーズンよりレンタルでリオ・アベに加入した。

リオ・アベでも中盤に欠かせない主軸として、リーグでは序盤戦を除いてほぼフル稼動。17試合に出場して3ゴールを記録していた。

この3ゴールはいずれもセットプレーによるものであり、うち2ゴールはPKでの得点。残りの1ゴールは、ポルトガル3強の一角スポルティング相手に一矢報いた、中距離の直接FK弾であった。名古屋グランパスでは、PKこそジョーにキッカーを譲るかもしれないが、FKでは、短距離のガブリエル・シャビエル、中長距離のジョアン・シミッチという役割分担も期待でき、彼らのプレースキックは対戦相手にとって脅威になることは間違いない。

◆リオ・アベではPKキッカーとして、リーグ戦で2ゴール

◆スポルティングとの一戦では美しい中距離FKを決める

左足から長短のパスを織り交ぜチームにリズムをもたらし、機を見ては前線に上がりミドルシュートや味方とのワンツーでゴールを脅かす。名古屋で例えるなら、利き足・背格好で似ているエドゥアルド・ネットを、より可動範囲を広くシュート精度を向上させ、何より「論理的に」したプレースタイルと言えよう。

試合中にストレスを溜めやすく、時に糸が切れたようなプレーをしてしまうのも、実によく似ている。ちなみに、シミッチにとってポルトガルでのラストマッチとなったトンデーラ戦では、試合終了後ロッカールームに引き上げる際にお口が悪すぎたとして一発レッドをもらっている。これがシミッチのポルトガルでの最後の姿となった。

◆ビルドアップに優れるが、時に自陣深くでボールを失い、チームにピンチをもたらすことも

いずれにせよ、ブラジルの名門で育ち、2度のポルトガル1部リーグへの挑戦でも、主軸としてプレーするどころかゴールを積み重ねるなど、その実力に疑いの余地はない。JリーグではトップクラスのMFであるエドゥアルド・ネットと高次元のスタメン争いを繰り広げてくれることだろう。

[su_youtube url=”https://youtu.be/pskuOmA9D4c”]

名古屋グランパスMF深堀隼平が移籍したビトーリア・ギマラインスってどんなクラブ?

名古屋グランパスMF深堀隼平が、ポルトガルの名門ビトーリア・ギマラインスのBチームに移籍することが決定した。

一部のポルトガルメディアでは、1年半の期限付き移籍とも報じられていたが、名古屋グランパス公式によると、レンタル期限は2019年7月31日までの約半年。ポルトガル1部に所属する名門クラブのBチームの一員として、まずはポルトガル2部リーグを戦うこととなった。

ポルト、ベンフィカ、スポルティング、近年だとブラガのような「ポルトガルの4強」ともいえるクラブと比較して、このビトーリア・ギマラインスの知名度は日本では圧倒的に低い。深堀の新天地は一体どのようなクラブなのか。基本情報に加え、その特徴を2つご紹介したい。

基本情報

ビトーリア・ギマラインスの正式名称は、「Vitória Sport Clube」。論展開の分かりやすさを重視するため、不恰好は承知で日本語的に表記するなら「ビクトリーSC」だ。

実はポルトガル1部にはもう1つ「ビクトリー」の名を冠するクラブが存在する。それが、かのジョゼ・モウリーニョの生まれ故郷「セトゥバル」に拠点を置く「Vitória Futebol Clube」である。

両者をポルトガル語で略すと「Vitória SC」と「Vitória FC」。違いは単に、前者が総合スポーツクラブであり、後者がサッカークラブであるというだけなのだが、これではあまりにややこしい。

そのため、前者「Vitória SC」を「Vitória de Guimarães」、つまり「ギマラインスに拠点を置く方のビクトリークラブ」を意味する【ビトーリア・ギマラインス】、後者「Vitória FC」を「Vitória de Setúbal」、つまり「セトゥバルに拠点を置く方のビクトリークラブ」を意味する【ビトーリア・セトゥバル】と呼び分けることが一般的である。

ビトーリア・ギマラインス
Vitória SC=Vitória Sport Club
→区別のため、Vitória de Guimarães

ビトーリア・セトゥバル
Vitória FC=Vitória Futebol Clube
→区別のため、Vitória de Setúbal

そして、今回深堀が移籍したのが、Vitória SC、つまり、サッカー以外のスポーツチームも抱える国内の名門「ビトーリア・ギマラインス」というわけである。

ここまでが基礎情報となる。それではビトーリア・ギマランイスの2つの特徴についてご紹介したい。

ポルトガルTier2の代表格。安西海斗が移籍したブラガとのミーニョ・ダービーは激アツ!

ポルトガルリーグの覇権を争うのは、紛れもなくポルト、ベンフィカ、スポルティングの「Três Grandes」すなわち「3強」であろう。ポルトガルの伝統的な分類に従うのであれば、この3強という切り方は正しい。しかし近年の戦績から、20年近くに渡りリーグタイトルを独占しているポルトおよびベンフィカの力が突出していることから「2強」、もしくは、スポルティングおよびブラガを加えた5位以下とは実力差がかけ離れている4チームを「4強」とする括りが現実的になっている。この4クラブが、ポルトガルリーグの頂点に立つTier1層であることに異論はないだろう。

当然、世界でもその名が知れ渡っているのはこれらTier1クラブであるが、ポルトガルには他にも有力な名門クラブは多く存在する。4強と比べてシーズンごとの浮き沈みは激しいものの、常に順位表の上位にランクインするポルトガルを代表するクラブの一角である。

17-18シーズンにはミゲウ・カルドーゾ監督に率いられ5位に大躍進を遂げた「リオ・アベ」は、近年常に上位に名を連ねる。「マリティモ」はマデイラ島のホームスタジアムで3強相手に度々番狂わせを演じて優勝争いを混沌に陥れ、3強以外でポルトガルリーグ優勝経験のある2クラブである「ベレネンセス」や「ボアビスタ」も、近年はかつての強さを取り戻そうとしている。

これらTier2クラブの中で突出しているのが、ビトーリア・ギマラインスだ。16-17シーズンには4強の一角ブラガを陥落させ、リーグ4位と大善戦。ポルトガルの3大タイトルのひとつポルトガルカップでは、2012-13シーズンに見事優勝に輝き、2016-17シーズンは惜しくもベンフィカに敗れたが準優勝の栄誉を手にしている。

3強体制に風穴を開ける最右翼がブラガだとすると、このギマラインスはブラガを含む4強体制を揺るがす最有力候補と言えよう。最大のライバルであるブラガとは、これまでリーグ4位の座を熾烈に争ってきた。

ブラガとギマラインスは、ともにポルトガル北部ミーニョ地方に拠点を置き、ポルト以北において覇権を争う2大クラブである。「土地の格」という意味では、ポルトガル初代国王アフォンソ・エンリケスの生誕地であり、「ポルトガル誕生の地」とも称されているギマラインスに軍配が上がるが、「サッカークラブとしての格」という意味では、ブラガがわずかに優勢である。クラブの実力が似通っていることもあり、両者が激突する「ミーニョ・ダービー」は、ベンフィカ対スポルティングによる「リスボン・ダービー」に次ぐ、ポルトガル屈指の名勝負となっている。(ちなみに、ポルト対ボアビスタによる「ポルト・ダービー」は、両者の実力差が如実であるために、盛り上がりに欠ける感は否めない)

奇しくも、ブラガのU-23チームには、柏レイソルMF安西海斗が同時期に加入している。2人の日本人が「ミーニョ・ダービー」で対戦する未来を、想像せずにはいられない。

エース格の多くがポルトへ!ビッグクラブへの入り口はここにあり

3強以外のクラブに移籍するメリットのひとつが、3強へのステップアップのチャンスが大きいことだろう。ポルトガルの移籍市場は明確な弱肉強食の構図となっており、国内で目覚ましい活躍をすれば、シーズン途中であろうと問答無用で3強に引き抜かれる。仮に3強への移籍が叶わずとも、その他海外クラブへの道も大きく拓ける。それはポルティモネンセ中島翔哉の移籍を取り巻く報道を見れば明らかだろう。

ビトーリア・ギマラインスは、近年多くの有望選手をポルトに輩出している。エース格がシーズン途中であろうと引き抜かれるが、彼らは新天地でも主力として活躍し、ポルトガルを代表する選手に成り上がるケースが少なくない。

例えば、セルジオ・コンセイサオン監督率いるポルトFW陣の2大看板であるチキーニョ・ソアレスとムサ・マレガは、ともにギマラインスでエースを張ったストライカーだ。ソアレスは、16-17シーズンにギマラインスで得点を量産し、その冬の移籍市場でポルトへ途中加入。加入直後からリーグ戦6試合連続ゴール・計9ゴールを記録して、新加入選手としては約70年ぶりとなる大記録を打ち立てる、衝撃的な活躍を見せた。

ムサ・マレガの場合は少し事情が異なり、当初マリティモでの活躍が認められ、ポルトに途中加入したが、半年間で結果を残せず、翌年ギマラインスに貸し出された。ポルトからレンタルに出されるケースは、有望な若手選手を除き、大抵はいわば戦力外の意味合いが強い。ポルトへのレンタルバックは叶わず、その行く末は、国内中位クラブや、トルコなど海外リーグへの完全移籍だ。しかし、マレガはギマラインスでその得点力を再び示し、見事1年でポルトに復帰。翌シーズンには絶対的なエースとして、得点ランキング3位となる22ゴールを記録した。

他にも、MFアンドレ・アンドレは、15-16シーズンにギマラインスからポルトに加わり、その後CLやクラシコなどの大舞台で印象的な活躍を残した(その後、ポルトで出場機会を失い、ギマラインスへ復帰)。近年、ギマラインスから加入した多くの選手が、ポルトでも変わらずインパクトを残していることから、両者間では、レンタル移籍含めて今後も定期的な取引が行われることは想像に難くない。当然、深堀にとっても、Bチームからのスタートとなり道のりは遠いが、Aチームのレギュラー格になってしまえば、ビッグクラブ行きについて無限の可能性が拓けるわけである。深堀はそれほどに魅力的なチームを選んだといえよう。

以上、深堀隼平が移籍したビトーリア・ギマラインスの基礎情報および2つの特徴をご紹介した。深堀は、一旦はポルトガル2部でのプレーとなるが、約半年間でそのポテンシャルを示し、まずは名門ギマラインスのAチームまで登りつめて欲しい。