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【書評】全てのビジネスマンの挑戦心をくすぐる一冊。『直撃本田圭佑』最大の見所は「起業家・本田」

(以下、ネタバレ注意)

本書は、本田圭佑への直撃取材で有名なサッカーライター木崎伸也氏が、過去に『Number』へ寄稿した28記事を再編集し、取りまとめたものである。CSKAモスクワ時代から、コンフェデ・ブラジルW杯での惨敗、アジア杯でのまさかの敗退を経て、現在所属するミランまで、まさに本田圭佑が日本代表のエースに君臨した約4年間で、同選手が発した数々の金言が登場する。

「1年後の成功を想像すると、日々の地味な作業に取り組むことができる。僕はその味をしめてしまったんですよ」(木崎伸也『直撃本田圭佑』(文藝春秋、2016)P40)

「駄目な自分がいたとしよう。なんで駄目な自分がいたら駄目なのか?それでいいじゃないですか。まずは自分の能力を知らないと、前に進めるはずがない」(木崎伸也『直撃本田圭佑』(文藝春秋、2016)P63)

まさに「サッカー選手・本田」の哲学が存分に表現された名言が次々と飛び出す。しかし、本書最大の見所は、ミハイロビッチ時代のミランでの本田圭佑を直撃した最終章の28章。選手としてというよりも、サッカースクールやクラブ経営に乗り出した「起業家・本田」として、彼はいま何を考えているのか。そして、その後のエピローグ。木崎氏が『Number』に寄稿しなかったという本田との裏話こそが、鳥肌必至のクライマックスである。

ことの発端は、木崎氏が現在のサッカーメディアの問題点を本田に語った場面。DeNAの一件でその問題点が浮き彫りとなったように、WEBメディアはPV数を稼ぐことばかりに必死になり、原稿の質が下がってきているとの発言に対して、「起業家・本田」が返した一言に、木崎氏はこれまでのスポーツライターとしてのキャリアを一変させる衝撃を受けたと書いている。

「ならば、自分でその問題を解決すればいい。いつまでライターをやるつもりですか。経営者になって、新しいメディアを立ち上げたらどうですか?」(木崎伸也『直撃本田圭佑』(文藝春秋、2016)P309)

まさに前例に囚われない、固定観念をぶち壊すのが得意な本田らしい一言だ。この言葉に動かされた木崎氏が、実際にどのようなアクションを起こしたのかは、ぜひ本書を手にとって自身の目で確かめていただきたい。

本田圭佑が発したこの一言が、木崎氏の臨場感溢れる卓越した表現力によって、読者の心にダイレクトに突き刺さってくる。本業よりもやりたいことがあるのに、リスクを恐れて挑戦できないなど、悩めるビジネスマンが、今すぐにでも理想や夢への一歩を踏み出したくなるような一冊だ。まさに、全てのビジネスマンに捧げる一冊。勇気のある挑戦と不断の努力がどれほど大切かを思い起こさせてくれる。

最後に、なぜ本田圭佑は、選手としても起業家としても成功を収めることができたのか。本書を読み、モチベーションを高めた読者が釘を刺されるような、その秘訣が凝縮された一言とともに本稿を締めくくりたい。

(休日の自主トレーニングの厳しさに木崎氏が驚いた際に本田が発した一言)

「これくらい気分が乗っていたら、誰でもできるんです。試されるのは、気持ちが乗らないとき。W杯で負けて日本中から『謝れ』と叩かれているときに、これができるか。僕はできます」(木崎伸也『直撃本田圭佑』(文藝春秋、2016)P312)

【書評】ファンタジスタとジャイキリの次はこれ!ユースを題材にした『アオアシ』がめちゃくちゃ面白い!

(※一部ネタバレがございますので、ご注意ください)

週刊ビッグコミックスピリッツで連載中のサッカー漫画『アオアシ』。高校サッカーを題材にしたサッカー漫画が世に溢れる中、本作はクラブユースを扱った稀有な作品なのだが、これがまた実に面白い。

愛媛の田舎町で生まれ育った主人公の青井葦人(アシト)は、女手ひとつで家計を支えるぶっきらぼうな母と、弟思いな優しい兄との3人暮らしを送るがむしゃらな少年。そんな彼が地元で出会ったのが、かつてスペインリーグでプレーした元日本代表MF福田達也。現在は名門「東京シティ・エスペリオン」のユースチームで監督を務めるという福田との出会いが、アシトの人生を変えた。

地元愛媛で中学サッカー部の試合を観戦する中で、技術やメンタルに未熟さを抱えながらも試合全体を俯瞰できる特別な「目」を持つアシトのプレーに惹かれた福田は、彼を自身が監督を務めるエスペリオンユースのセレクションに誘う。

「俺には野望がある。俺の作り上げたクラブで、世界を掌中に収める。世界への踏み台じゃない。我がクラブこそが世界だと。バルサもマドリーも、マンチェスターも、ミランも、叩きつぶす。その野望のすべてを担うもの、ユースだ」

「世界へ連れていってやる」

(※『アオアシ』1巻より引用)

ハイレベルな選手が揃うセレクションで自らの非力さに挫けそうになりながらも、東京へ向かう自分を支えてくれた母と兄を想い、本気でプロサッカー選手を目指すアシトの成長過程が描かれている。

この『アオアシ』は、日本を代表するサッカー漫画『ファンタジスタ』と『ジャイアント・キリング』が持つ魅力を組み合わせたようなハイブリッドな作品だ。

田舎町で育ち、愛する家族のために懸命に困難を乗り越えようとする、サッカーに一途なアシトは、『ファンタジスタ』の坂本轍平さながら。アシトとW主役とも言える本作のキーパーソン福田は、日本代表の未来を担うスター選手としての名声を得ながらも、不慮の怪我で選手生命を絶たれて監督になった人物。普段は脱力感を醸し出しているが、サッカーに対する表情や言動は全くの真逆。その姿は、魔法の言葉で選手の心を捉える『ジャイアント・キリング』の達海猛を彷彿とさせる。

この2作を読んだことのある方であれば、『アオアシ』を「両作のパクリだ」と思うかもしれない。しかし、確かに設定こそ似ているが、本作には作者小林有吾氏の卓越した表現力によって、『ファンタジスタ』にも『ジャイアント・キリング』にもない、『アオアシ』だからこその魅力が詰まっているのだ。

ぶっきらぼうな母が東京へ向かうアキトに託した一通の手紙と感動のストーリーが詰まった「あるプレゼント」。そんな母と、常にアシトに優しい言葉を投げかけ自信を与えてくれる兄との別れは涙必至の感動的な名シーンに。他にも、親友の橘、大友、冨樫らと助け合って成長していく過程や、「ジュニアユースからの昇格組」と「その他」の間にある軋轢など見所は盛りだくさん。特筆すべきは、作者小林氏が誇るキャラクターの感情を紙面に具現化する圧倒的な作画力。アシトを見下すエスペリオンユースの逸材・阿久津や、アシトの才能を発見した際にニンマリと笑みをこぼす福田の表情は、ホラー映画さながらであり、作品のストーリーラインを一層引き立てている。このどれもが、『アオアシ』でしか楽しめないオリジナルな魅力なのだ。

現在はコミック7巻まで発売中。日本代表の宇佐美貴史や遠藤航らユース出身のプロ選手も絶賛し、これからも一層熱を帯びてくるであろう『アオアシ』には、今後も注目だ。

<ファンタジスタ>

<ジャイアント・キリング>