「まだベンフィカを率いていることを分かっていないようだ」。非難を浴びるルイ・ビトーリアがベンフィカの輝く未来を担う

今季より、スポルティングへ移籍したジョルジ・ジェズスの後を引き継ぐ形で、ベンフィカ監督に就任したルイ・ビトーリア。前年にビトーリア・ギマラインスをリーグ5位に押し上げた功績が評価され、ついに3強クラブの指揮官へとステップアップした。

しかし、さすが国内随一のビッグクラブとでも言うべきか、ここまでルイ・ビトーリアはベンフィカで高評価を得るには至っていない。CLではアトレティコ・マドリードやガラタサライなど強豪相手にグループステージ突破を決め、リーグでは11節を終えて3位につけるなど、まずまずの結果を残しているが、それでは満足しないのがベンフィカがベンフィカたる所以であろう。

特に、伝統的な対立関係にあり、今季は指揮官を奪われたスポルティングとのダービー戦で、3戦全敗しているのは致命的だ。開幕前、スーペルタッサでの敗北によりタイトルを逃し、ポルトガルカップでも早期敗退に追い込まれた。リーグでは0-3の歴史的大敗の不名誉を浴びるなど、スポルティング相手に屈辱の3連敗を喫している。かつてベンフィカの会長選を戦ったルイ・ランジェル氏からは「ルイ・ビトーリアは、自分がベンフィカを指揮していることをまだ分かっていないようだ」と、クラブの監督として相応しくないとのレッテルを貼られた。

ともに無敗の首位スポルティングと2位ポルトに出遅れ、リーグ戦でも黒星が付くなど、何かと批判を浴びることの多いルイ・ビトーリアだが、実は、6年間のジョルジ・ジェズス政権にあったベンフィカの過渡期を変革するのに、偉大な功績を残しつつある。ルイ・ビトーリアはもっと評価されても良いのではないか。それが筆者の見解である。

ルイ・ビトーリアが、今季より監督就任したベンフィカにもたらしたのは、有望なユース選手の大量抜擢である。クラブの未来を担うBチームの若手選手を、ここまで幾人もトップチームに昇格させ、そして大胆に抜擢してきた。

開幕戦からスタメン出場を重ねたネウソン・セメードと、CLアトレティコ戦でポルトガル人の最年少若手ゴール記録を更新したゴンサロ・グエデスは、ルイ・ビトーリアが大抜擢してから僅か半年の間にポルトガル代表に招集される選手にまで大成した(グエデスは前年にトップチームに上がったが、今季ほどの出場機会は得られていなかった)。もちろんここで述べているのは、U-21代表ではない。百戦錬磨の選手が集うフル代表である。両選手の活躍ぶりは凄まじく、アーセナルやチェルシー、バレンシアやインテルなど、世界有数のメガクラブが注目する逸材となった。

ルイ・ビトーリアが抜擢したユース上がりの選手は彼ら2名だけではない。ビトール・アンドラーデとレナト・サンチェスの両MFも出場機会を増やし始めた。前者はマンチェスター・シティが関心を寄せ、後者はホームでのトップチームデビュー戦で豪快なロングシュートを決めるなど、早くも大物の予感を漂わせている。また、Bチームには、ジョアン・テイシェイラやヌーノ・サントス、クレージオなど、トップチームに定着し得る注目の若手選手が多く控えており、ルイ・ビトーリアが抜擢するのも時間の問題だろう。

アトレティコ・マドリードのシメオネ監督は、そんなベンフィカの育成力を絶賛している。

「ベンフィカのユース育成は常に重要なものであった。現在は負傷中だがネウソン・セメードが出てきて、今ではレナト・サンチェスが頭角を現した。彼は優れたパス技術を備え、中盤にビジョンを与えている。このような若手選手の頭角は注目に値する」

なぜ、これほどまでに多くの選手がユースから抜擢され、昇格してまもなくトップチームで活躍できるのだろうか。ルイ・ビトーリア本人の言葉に、そのシンプルな理由が隠されていた。

「彼らをピッチに送り出しているのは、クオリティがあるからだ。このクラブでプレーする全選手が満足に感じており、常に扉が開かれている若手選手は、非常にモチベーションが高い。若手がプレーできていること、そして彼らがチームに何かを加えることができていることには、私も満足している。しかしそれができるのは、彼らの側で助けの手を差し伸べる偉大な選手がいるからなのだ」

チームに所属するポルトガル有数、そして各国代表クラスの選手がユース上がりの若手の進化を助ける。彼らも元来高い能力を備えていることから、経験を重ねて急速に成長する。ルイ・ビトーリアの若手大抜擢の裏には、ベテランと若手が極めて高度に融合した、チームの好循環があった。

これまでは有力選手をクラブに買ってくる「ポルト寄り」の戦略を取っていたベンフィカが、ユースから代表を目指す自家製若手選手を育てる「スポルティング寄り」の戦略に舵を切ろうとしている。直近でベンフィカが世に送り出した偉大なスターは、ダビド・ルイスやラミレス、ディ・マリアやマティッチなど外国国籍の選手ばかりだが、数年後にはこれらユース出身の若手ポルトガル人がその道を辿るだろう。今はジョルジ・ジェズス政権からの過渡期であり、結果が出るまでには辛抱が必要だ。しかし、決して良いとは言えない対戦成績の中にも、ベンフィカの将来に希望を与える明るい兆候があった。そして、クラブの未来を輝かしく照らしているのが、何を隠そう、批判を浴びることの多いルイ・ビトーリア監督自身なのである。

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