泣きじゃくった「ルスの悲劇」を乗り越えたロナウド。12年間待たせた国民に念願の初タイトルをもたらせるか

EUROで史上2度目となる決勝の舞台へと勝ち上がったポルトガル代表。ヨーロッパ王者へ王手をかけた国民は、しかしながら、歓喜と懸念が渦巻く複雑な心境を抱いていることだろう。

蘇る12年前の悪夢。「ルスの悲劇」と若きクリスティアーノ・ロナウドの涙。

ポルトガルが初めてEURO制覇へ王手をかけたのは、今から12年前の2004年。自国開催となった本大会で、順調にトーナメントを勝ち上がり、そして決勝の舞台でギリシアと対戦した。グループステージ初戦でまさかの敗北を喫した相手。リベンジを果たすには、十分すぎる舞台だった。

強豪国が初戦で足元をすくわれる大会は往々にして存在する。まさか、2度も同じ過ちを、それも決勝という大舞台で犯すことはないだろう。ポルトガル国民は、初の主要国際タイトルの獲得を楽観的に待ち侘びた。

キッフオフの笛から90分後、「光のスタジアム」ことルス・スタジアムは落胆の闇に包まれた。攻めても攻めてもギリシアの鉄壁の守備を崩せず。手に届きかけた優勝杯が、同じ大会で2度の敗北を喫するという屈辱に飲み込まれ、面前からするりと消え失せた。

ピッチでは、代表に新たな風を持ち込んでいた若き「17」番が、目を腫らして泣きじゃくった。金髪のモヒカンヘアに、両耳にぶら下がる巨大なピアス。試合中にも、感情を剥き出し独りよがりなプレーに走る未熟な調子乗りドリブラーのプライドは、まさかの敗北によりズタズタに引き裂かれたのだった。

12年の時を経て、当時の華奢なドリブラーは、今や強靭な肉体を誇る世界のトップスコアラーへと成長した。そこに当時の「悪ガキ」の面影はない。2004年にキャプテンを務めたフィーゴから、母国を背負って立つ「7」番とキャプテンの腕章を引き継ぎ、チームの大黒柱となった青年。12年前、悔し涙で顔を赤らめたクリスティアーノ・ロナウドは、その後欧州チャンピオンズリーグやバロンドールなど、クラブレベルであらゆるタイトルを総ナメにし、代表では歴代最多得点の栄誉を今も更新し続けている。

全てを勝ち得た男に唯一足りないもの。それが代表での主要タイトルである。ルスの悲劇から参戦した主要国際大会は5回。2006ドイツW杯ベスト4、EURO2008ベスト8、2010南アフリカW杯ベスト16、EURO2012ベスト4、2014ブラジルW杯グループステージ敗退。いずれの大会でも、世界一の男は決勝の舞台に立つことなく、大会を後にしていた。

当時開催国として決勝に臨み、そして敗れ去ったポルトガル。奇しくも、今回決勝の舞台で相見えるは、「開催国」フランスである。12年前に浴びた屈辱を、今度は相手に浴びせる番だ。ポルトガル国民は、もうロナウドの悔し涙など望んでいない。待ち望むは、12年間見守り、期待以上に成長してくれた彼がようやく母国へタイトルをもたらすその瞬間である。

来る日曜日、ポルトガル国民は目に焼き付けるのだろうか。キャリアの終盤でようやく手にするタイトルを天に上げ、嬉し涙で顔を赤らめたロナウドの姿を。

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