絶望からの歓喜。12年を彩る4色の涙。「監督」ロナウドがついに手にした最後のピース

開始直後のまさかの負傷離脱。監督への「転身」。そして12年間を彩った「4色の涙」。初の主要国際タイトルを獲得したポルトガル代表において、やはり話題の中心はこの男が独占した。

EURO2016決勝。フランスとの決戦。ポルトガルにとっては、自国開催となった2004年にギリシアに敗れて以来、12年ぶりとなるヨーロッパ王者をかけた戦い。全世界が注目したのは、当然、マンチェスター・ユナイテッド時代からの盟友ナニとツートップを組んだクリスティアーノ・ロナウドだった。欧州CLからバロンドールまで、あらゆるタイトルを勝ち取った男が、未だ勝ち得ない代表でのタイトル。12年ぶりに目前まで迫った機会を、母国国民も固唾を飲んで見守った。

きっとクリスティアーノがどうにかしてくれる。そう思っていたに違いないポルトガル国民は、試合開始数分で悲壮感に包まれることになる。

フランス代表パイエから激しいタックルを浴びせられたロナウドは、それ以降終始具合を気にしていた左足を抱え、17分に突然倒れ込んだ。一度ピッチを離れ、応急処置としてアイシングを終え強行出場。しかし、ロナウドがこの試合にかけた溢れんばかりの想い、ポルトガル国民が一旦は感じた安堵感が、23分に悲劇に変わった。

再度ピッチに倒れこんだロナウドの目には大粒の涙が浮かんでいた。溢れ出る想いをもう体が受け止めきれない。これ以上プレーできないことを本能的に悟ったロナウドを、絶望の涙が襲ったのだった。

2004年の決勝。まさかの敗北を喫した若きロナウドが流したあの悔し涙とは違う。今の自分には、その悔しさを味わうことすらできないのだ。やるせない絶望感を抑えきれないロナウドは、担架で運ばれトンネルの暗闇へ。ロナウドにとってのEUROは儚く幕を閉じた。

チームの大黒柱を失ったポルトガル代表メンバーだったが、勝利を望む熱き火を消すことはなかった。ピッチに立てないキャプテンを必ず優勝台に連れて行こう。そう口を揃えるかのように、残されたメンバーは一丸となって死闘に臨んだ。

気迫のセーブで幾度となく決定機を阻止したルイ・パトリシオ。ロナウドを破壊したパイエに報復するかのように飛び蹴りを食らわしたセドリック。レアルの盟友の後を継ぎ、チームを後方から支えたペペ。足を痙攣させながらも、敵エースグリーズマンを抑え切ったジョゼ・フォンテ。名手コエントランの不在を感じさせないほどピッチを駆け回ったラファエル・ゲヘイロ。チームに落ち着きを与えた若きMFウィリアン・カルバーリョ。猛獣のようにボールを追いかけ回した驚異の18歳レナト・サンチェス。攻守にわたり体を張り続けたジョアン・マリオ。交代後にはロナウドに足をぶっ叩かれることになるなど知る由もなく、彼のために決死のプレーを見せたアドリエン・シウバ。盟友ロナウドなき後、若きチームを鼓舞し続けたナニとクアレスマの両雄。焦るチームを引き締めたベテランMFジョアン・モウティーニョ。そして、ブラジルW杯では戦犯に挙げられながらも、この日歴史的な決勝点を挙げたエデル。

ピッチに立つ全員が、優勝杯を掲げさせるために死に物狂いで駆け回った。そう、テクニカルエリアでジョゼ・モウリーニョの如く感情を爆発させるあの男に。

ロナウドのEUROはまだ終わっていなかった。そこには、選手としてはプレーできないが、フェルナンド・サントス監督を凌駕する存在感を発揮する「監督」ロナウドの姿があった。

喜怒哀楽を剥き出しにし、声を荒げる名将ロナウドに、歓喜の瞬間は突然に訪れる。大会にあたり「ヨーロッパいちのストライカーになる」と豪語していた途中出場のエデルが、有言実行となる美しいミドルシュートをゴール左隅に沈めた。ピッチサイドで雄叫びをあげるメンバーの中心にいたのはもちろんロナウド。「インポシーベウ!」ポルトガル語で「信じられない!」。現実を現実と受け止められない顔をしたロナウドの目には、優勝が眼前に迫った希望感から、またもや涙が浮かんでいた。

試合終了のホイッスルを聞いたポルトガル代表の面々は我を忘れ踊り狂った。左足を負傷したはずのロナウドも、この瞬間だけは痛みを忘れて飛び跳ねた。ピッチを後にする際にナニへ託した母国の誇りキャプテンマーク。盟友から再度腕章を譲り受けたその腕で、ついにロナウドが「ポルトガル代表のキャプテン」として、初めてチャンピオンズカップを掲げた。

一体何度王者のトロフィーを掲げただろうか。そんな男でもこの優勝杯は格別だ。幾度となく公に口にしてきた念願の代表での初タイトル。12年前に一度手にしかけたからこそ、その喜びは計り知れないものだったのだろう。

12年前の悔し涙、そして今宵流した絶望の涙と希望の涙。ロナウドがタイトルを願って止まなかった12年間を彩る、4色の涙を締めくくったのは、チャンピオンズカップを掲げながらその目に走らせた、歓喜の涙だった。

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