名古屋グランパスMF深堀隼平が移籍したビトーリア・ギマラインスってどんなクラブ?

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名古屋グランパスMF深堀隼平が、ポルトガルの名門ビトーリア・ギマラインスのBチームに移籍することが決定した。

一部のポルトガルメディアでは、1年半の期限付き移籍とも報じられていたが、名古屋グランパス公式によると、レンタル期限は2019年7月31日までの約半年。ポルトガル1部に所属する名門クラブのBチームの一員として、まずはポルトガル2部リーグを戦うこととなった。

ポルト、ベンフィカ、スポルティング、近年だとブラガのような「ポルトガルの4強」ともいえるクラブと比較して、このビトーリア・ギマラインスの知名度は日本では圧倒的に低い。深堀の新天地は一体どのようなクラブなのか。基本情報に加え、その特徴を2つご紹介したい。

基本情報

ビトーリア・ギマラインスの正式名称は、「Vitória Sport Clube」。論展開の分かりやすさを重視するため、不恰好は承知で日本語的に表記するなら「ビクトリーSC」だ。

実はポルトガル1部にはもう1つ「ビクトリー」の名を冠するクラブが存在する。それが、かのジョゼ・モウリーニョの生まれ故郷「セトゥバル」に拠点を置く「Vitória Futebol Clube」である。

両者をポルトガル語で略すと「Vitória SC」と「Vitória FC」。違いは単に、前者が総合スポーツクラブであり、後者がサッカークラブであるというだけなのだが、これではあまりにややこしい。

そのため、前者「Vitória SC」を「Vitória de Guimarães」、つまり「ギマラインスに拠点を置く方のビクトリークラブ」を意味する【ビトーリア・ギマラインス】、後者「Vitória FC」を「Vitória de Setúbal」、つまり「セトゥバルに拠点を置く方のビクトリークラブ」を意味する【ビトーリア・セトゥバル】と呼び分けることが一般的である。

ビトーリア・ギマラインス
Vitória SC=Vitória Sport Club
→区別のため、Vitória de Guimarães

ビトーリア・セトゥバル
Vitória FC=Vitória Futebol Clube
→区別のため、Vitória de Setúbal

そして、今回深堀が移籍したのが、Vitória SC、つまり、サッカー以外のスポーツチームも抱える国内の名門「ビトーリア・ギマラインス」というわけである。

ここまでが基礎情報となる。それではビトーリア・ギマランイスの2つの特徴についてご紹介したい。

ポルトガルTier2の代表格。安西海斗が移籍したブラガとのミーニョ・ダービーは激アツ!

ポルトガルリーグの覇権を争うのは、紛れもなくポルト、ベンフィカ、スポルティングの「Três Grandes」すなわち「3強」であろう。ポルトガルの伝統的な分類に従うのであれば、この3強という切り方は正しい。しかし近年の戦績から、20年近くに渡りリーグタイトルを独占しているポルトおよびベンフィカの力が突出していることから「2強」、もしくは、スポルティングおよびブラガを加えた5位以下とは実力差がかけ離れている4チームを「4強」とする括りが現実的になっている。この4クラブが、ポルトガルリーグの頂点に立つTier1層であることに異論はないだろう。

当然、世界でもその名が知れ渡っているのはこれらTier1クラブであるが、ポルトガルには他にも有力な名門クラブは多く存在する。4強と比べてシーズンごとの浮き沈みは激しいものの、常に順位表の上位にランクインするポルトガルを代表するクラブの一角である。

17-18シーズンにはミゲウ・カルドーゾ監督に率いられ5位に大躍進を遂げた「リオ・アベ」は、近年常に上位に名を連ねる。「マリティモ」はマデイラ島のホームスタジアムで3強相手に度々番狂わせを演じて優勝争いを混沌に陥れ、3強以外でポルトガルリーグ優勝経験のある2クラブである「ベレネンセス」や「ボアビスタ」も、近年はかつての強さを取り戻そうとしている。

これらTier2クラブの中で突出しているのが、ビトーリア・ギマラインスだ。16-17シーズンには4強の一角ブラガを陥落させ、リーグ4位と大善戦。ポルトガルの3大タイトルのひとつポルトガルカップでは、2012-13シーズンに見事優勝に輝き、2016-17シーズンは惜しくもベンフィカに敗れたが準優勝の栄誉を手にしている。

3強体制に風穴を開ける最右翼がブラガだとすると、このギマラインスはブラガを含む4強体制を揺るがす最有力候補と言えよう。最大のライバルであるブラガとは、これまでリーグ4位の座を熾烈に争ってきた。

ブラガとギマラインスは、ともにポルトガル北部ミーニョ地方に拠点を置き、ポルト以北において覇権を争う2大クラブである。「土地の格」という意味では、ポルトガル初代国王アフォンソ・エンリケスの生誕地であり、「ポルトガル誕生の地」とも称されているギマラインスに軍配が上がるが、「サッカークラブとしての格」という意味では、ブラガがわずかに優勢である。クラブの実力が似通っていることもあり、両者が激突する「ミーニョ・ダービー」は、ベンフィカ対スポルティングによる「リスボン・ダービー」に次ぐ、ポルトガル屈指の名勝負となっている。(ちなみに、ポルト対ボアビスタによる「ポルト・ダービー」は、両者の実力差が如実であるために、盛り上がりに欠ける感は否めない)

奇しくも、ブラガのU-23チームには、柏レイソルMF安西海斗が同時期に加入している。2人の日本人が「ミーニョ・ダービー」で対戦する未来を、想像せずにはいられない。

エース格の多くがポルトへ!ビッグクラブへの入り口はここにあり

3強以外のクラブに移籍するメリットのひとつが、3強へのステップアップのチャンスが大きいことだろう。ポルトガルの移籍市場は明確な弱肉強食の構図となっており、国内で目覚ましい活躍をすれば、シーズン途中であろうと問答無用で3強に引き抜かれる。仮に3強への移籍が叶わずとも、その他海外クラブへの道も大きく拓ける。それはポルティモネンセ中島翔哉の移籍を取り巻く報道を見れば明らかだろう。

ビトーリア・ギマラインスは、近年多くの有望選手をポルトに輩出している。エース格がシーズン途中であろうと引き抜かれるが、彼らは新天地でも主力として活躍し、ポルトガルを代表する選手に成り上がるケースが少なくない。

例えば、セルジオ・コンセイサオン監督率いるポルトFW陣の2大看板であるチキーニョ・ソアレスとムサ・マレガは、ともにギマラインスでエースを張ったストライカーだ。ソアレスは、16-17シーズンにギマラインスで得点を量産し、その冬の移籍市場でポルトへ途中加入。加入直後からリーグ戦6試合連続ゴール・計9ゴールを記録して、新加入選手としては約70年ぶりとなる大記録を打ち立てる、衝撃的な活躍を見せた。

ムサ・マレガの場合は少し事情が異なり、当初マリティモでの活躍が認められ、ポルトに途中加入したが、半年間で結果を残せず、翌年ギマラインスに貸し出された。ポルトからレンタルに出されるケースは、有望な若手選手を除き、大抵はいわば戦力外の意味合いが強い。ポルトへのレンタルバックは叶わず、その行く末は、国内中位クラブや、トルコなど海外リーグへの完全移籍だ。しかし、マレガはギマラインスでその得点力を再び示し、見事1年でポルトに復帰。翌シーズンには絶対的なエースとして、得点ランキング3位となる22ゴールを記録した。

他にも、MFアンドレ・アンドレは、15-16シーズンにギマラインスからポルトに加わり、その後CLやクラシコなどの大舞台で印象的な活躍を残した(その後、ポルトで出場機会を失い、ギマラインスへ復帰)。近年、ギマラインスから加入した多くの選手が、ポルトでも変わらずインパクトを残していることから、両者間では、レンタル移籍含めて今後も定期的な取引が行われることは想像に難くない。当然、深堀にとっても、Bチームからのスタートとなり道のりは遠いが、Aチームのレギュラー格になってしまえば、ビッグクラブ行きについて無限の可能性が拓けるわけである。深堀はそれほどに魅力的なチームを選んだといえよう。

以上、深堀隼平が移籍したビトーリア・ギマラインスの基礎情報および2つの特徴をご紹介した。深堀は、一旦はポルトガル2部でのプレーとなるが、約半年間でそのポテンシャルを示し、まずは名門ギマラインスのAチームまで登りつめて欲しい。