7戦連続スタメン。なぜ前田大然はマリティモで試合に出続けられるのか

Pocket

日本代表FW前田大然が今季より加入したマリティモは、第9節を終えた時点で、2勝4分3敗でリーグ12位につける。ポルトガル屈指の若手戦術家ヌーノ・マンタ・サントス監督に率いられる国内でも有数の名門クラブとしては決して満足できる数字ではないが、第9節にはホームで首位ポルト相手に粘り強い守備を見せつけ、勝ち点1をもぎ取った。

前田大然は、プレシーズンや開幕序盤こそ途中出場が多かったが、ここ数ヶ月は完全にレギュラーを奪取。第9節までに7試合連続でスタメン出場を果たし、すでにポルトガルリーグでは2ゴールをあげるなど、初の海外挑戦で順風満帆なスタートを切っていると言えよう。

なぜ前田大然は、現在のチーム状況はどうあれ、ポルトガル屈指の名門クラブのひとつであるマリティモでコンスタントにプレー機会を得ることができているのだろうか。

ヌーノ・マンタ率いるチームは、シーズン序盤は5-4-1のシステムをベースに試行錯誤を重ねてきたが、直近では4-5-1システムが定着しつつある。前田大然はその中で、右サイドハーフを中心に、メンバー編成によっては最前線を任せられるなど、複数のポジションを経験しているが、彼の主戦場である両サイドハーフに対して、ヌーノ・マンタは身体・状況判断(頭)の両面で、負荷の高いタスクを与えており、前田はそれに十分に応えているのが要因だろう。

マリティモでのプレー原則として、ボール非保持時には、サイドハーフは相手サイドバックをほぼマンツーマン気味にケアしなくてはならない。そのため、サイドバックが高い位置を取り続けるポルト相手には、ほぼ6-3-1と言っても過言ではないほどに右の前田大然と左の8番ホルヘ・コレアが最終ラインに吸収されていた。

チームの守備の基準点は、相手がハーフウェイランを超え、サイドにボールを預けたタイミング。中央を強固に締めていた3センターハーフが前進し、サイドハーフとサイドバックと連動してボールをからめ取る。ポルト戦でも、マリティモの3枚のセンターハーフ、キャプテンマークを巻いた12番のエドガル・コスタ、19歳の若手MFである背番号60のペドロ・ペラージオ、そして2012年には川崎フロンターレでプレーしていた25番のレネ・サントスは、ポルトの豪華攻撃陣を完全に制圧していた。

松本山雅時代には、最前線でボールを追いかけ回す印象の強かった前田大然だが、マリティモで求められる守備を理解し、あくまで相手サイドバックをケアするためのポジションを取り、それ以外には無闇にチェイスせず、奪いどころで味方と連動してボールをからめ取る、というタスクを十分に遂行していた。(ただし、味方とのマークの受け渡し等は未だ改善の余地が大きく、相手サイドハーフをフリーにさせてるしまうシーンも散見された)

ボール保持時には、ヌーノ・マンタが所属選手各々の個性を把握したうえで最適化したであろう、彼のエッセンスが表出した特徴が出ており、前田にはサイドハーフらしからぬ役割が与えられている。

非保持時には4-5-1の低いポジションでブロックを組むサイドハーフだが、ボール保持時には4-3-3に近い形で、運動量をもってポジションを上げる。その際に、右サイドハーフの前田大然は、ワントップである192センチの長身FW21番ルチアーノ・ネケカウルと、ツートップに近いポジションを取り、左サイドハーフのコレアはワイドに位置取る、左右非対称な布陣が基本となる。コレアは左利きのドリブラーであり、ワイドに張りながら一人で局面を打開できるタイプであるため、右サイドハーフはかつての日本代表で岡崎慎司がその役割を果たしたように、中央に待ち構えゴールを陥れる役目を期待されている。

一方で、右サイドはというと、右サイドバックのギニアビサウ代表31番のナヌーが、見かけによらずボールの扱いがうまく、高い位置で攻撃参加する。ツートップに近い動き方をする前田は、中央からサイドに抜けてナヌーからボールを受けたり、反対にサイドから中央にダイアゴナルに動き出してゴールへ向かったりと、柔軟な動きを見せる。特にダイアゴナルな動きについては、ポルト戦でも、相方の長身FWネケカウルがボールを競ってそらす裏のスペースを、前田は虎視眈々と狙っている印象があった。(ネケカウルがぺぺやマルカーノらとのエアバトルに歯が立たず、実際に裏で得点機を迎えることはなかったが)

まとめると、ボール非保持時には、最終ラインに吸収されることを厭わず、味方と連動して集中力を持って守備網を形成し、ボール保持時には運動量を上げて最前線に位置どり、サイドハーフながらツートップ的な役目を全うする。まさに、松本山雅時代にトップやトップ下のポジションを主戦場としていた前田だからこそ体現できるサイドハーフ像なのだ。逆サイドのコレアには、このオフェンスタスクは決して成し得ないし、ポルトガルリーグ全チームを探しても、このようなサイドハーフ像は見当たらない希少な存在だ。ちなみに、ポルト戦でもそうだったように、チームの選手交代によって、ワントップや左サイドハーフなどポジションを取っ替え引っ替えする柔軟性も、スタメンでプレーする選手として重宝されている理由だろう。

現在の前田大然は、上記のような献身的なプレーを高く評価され、一家に一台必要な便利屋としてチームに十分に貢献している。自身初の海外リーグで、間違いなく選手としての幅を広げているし、その手応えも感じつつあるに違いない。今後のさらなる躍進に期待したい。