【FutePor Scout File Number 12】レナト・サンチェス(ベンフィカ)

「育成大国」ポルトガルに、また1人新たなスターが颯爽と現れた。

ベンフィカでプレーするレナト・サンチェス。1997年生まれの、なんと18歳だ。(2016-03-01現在)

6年間続いたジョルジ・ジェズス政権からの脱却を課せられた新生ベンフィカ。新監督ルイ・ビトーリアが導き出した答えは、クラブの将来を支える「生え抜き選手の大抜擢」であった。就任1年目から、ユースチームに所属していた選手をトップチームに引き上げるだけでなく、彼らに多くの出場機会を与えた。特に、SBネウソン・セメードやFWゴンサロ・グエデスらは、ルイ・ビトーリアがスタメンに抜擢してからわずか半年でポルトガルA代表に選ばれる、異例の「スピード出世」を果たした。この2名に止まらず、ビトール・アンドラーデら次なるスター候補には枚挙に暇がないが、その中でもレナト・サンチェスのインパクトは絶大であった。

2015-16シーズン10月30日。この年トップチームへ昇格したばかりのレナトは、トンデーラとの一戦でAチームデビューを果たした。それからわずか1ヶ月後の12月4日。「レナト・サンチェス」の名は、ポルトガル中に知れ渡ることとなる。

ポルトガルリーグ第12節、ホームにアカデミカを迎えた一戦でレナトはスタメン出場を果たした。ベンフィカが2-0で迎えた後半84分。中盤でボールを受けたレナトは、すぐさま前を向き、敵陣中盤にドリブルで侵入した。相手選手を背に一度左サイドへボールを展開。スピードを落とし、そしてフリーの状態で再びパスを受けた。得意の右側にボールを止めシュート体勢へ。力を十分に溜め込んだ右足から、約30メートルを超える豪快なロングシュートを叩き込んだ。

まさに、ベンフィカの未来が拓けた瞬間であった。

トップチームデビューを果たしてからわずか1ヶ月の若者のゴールに、クラブ関係者は大いな期待を滲ませた。同僚はレナトに抱きつき祝福を寄せ、ビトーリア監督とビエイラ会長はニンマリと頬を緩めた。ホームに駆けつけた大観衆は、生え抜き選手のスーパープレーにマフラーを振り回し、そして踊り狂った。

Aチームデビューから半年も経たないうちに、18歳の若者はポルトガル王者の中盤には欠かせないキープレーヤーへと変貌した。かつてポルトに所属し、マンチェスター・ユナイテッドへ羽ばたいたブラジル人MFアンデルソンのような、ドレッドヘアーの青年が魅せる豪快なプレーを世界が放っておくはずもなく、CLで対戦した名将は名指しで警戒心を示した。アトレティコ・マドリードのディエゴ・シメオネは「中盤のレナト・サンチェスはすごく好きな選手だ。素晴らしいシュートと戦術眼を持ち合わせている。彼のような選手を見れるのは良いことだ」と絶賛し、ゼニトのアンドレ・ビラス・ボアスは「レナトは信じられない時期を過ごしている」と、母国の将来を担う若者を褒め称えた。

かつてアンデルソンに目を付けたマンチェスター・ユナイテッドが6000万ユーロの大金を用意しているとの噂も流れ、ユベントスやバイエルン、レアル・マドリードやバルセロナ、そしてパリ・サンジェルマンなど、世界有数のメガクラブが争奪戦を繰り広げることが予想されている。

世代交代が囁かれるポルトガル代表の中盤。その新たなエンジンを担うのは、これまでにない馬力を持ったレナト・サンチェスになるだろう。過去のポルトガル代表にいなかったニュータイプの青年には、明るい未来が待ち受けている。