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世界王者リバプール「今季最高の補強」。ベールに包まれたポルトガル人コーチに迫る

『maisfutebol』

リパプール監督ユルゲン・クロップの右腕ペパイン・ラインダースに誘われ、欧州王者の「elite player development」責任者に就任したビトール・マトス氏が、ポルトガルメディア『maisfutebol』のロングインタビューに応答。CL制覇に続き、2019-20シーズンのプレミアリーグも圧倒的な強さで蹂躙する最強チームにおいて、成功の鍵を握りながらも詳細な素性が明かされてこなかったブレインの人生に迫った。

-監督としてのキャリアについて話をする前に、あなたの幼少期について振り返らせてください。サッカーは何歳のときに始めたのですか?

24時間ずっとサッカーができるならそうしているような子どもでした。道端でも学校でも家でも、サッカーをどのような形であってもできる方法をいつも探していました。オフィシャルな形でサッカーを始めたのは13歳のとき。地元の「SCコインブロインス」でプレーし始めました。その日から一度たりともサッカーから離れたことはありません。

-何年間プレーしたのですか?

サッカーの育成年代は全て経験して、シニアの年代になったときに、監督をする機会が訪れました。面白いことに、多くのチームメイトを自分が指導したのです。

-いつ監督としてのキャリアを送りたいと思い始めたのですか?

私は常にサッカーに対して大きな情熱を注いできました。SCコインブロインスやCFバラダーレスといったチームでプレーヤーとしてサッカーと繋がっていたし、その少し後には、FCポルトの偉大なる瞬間に立ち会える幸運にも恵まれました。2002-03と2003-04のジョゼ・モウリーニョ監督期のFCポルトです。この2年間は、チームがどのようにプレーし、どのように構築されるのかという観点から、私の中で記憶に残っています。おそらくCLの前日と翌日の新聞をまだ持っていると思います。あれが私の好奇心を大いに刺激しました。ジョゼ・モウリーニョの足跡を追うだけでなく、その成功の背景を知りたいと思い、監督になりたいと考えるようになりました。だから、15歳のときにはもう自分の頭の中は決まっていたのです。シニア年代の初年度までプレーは続け、(ポルト大学の)スポーツ学部で学びました。その後、オランダに留学し、そして監督になる誘いを受けました。

-オランダに留学したのですね。

オランダには「エラスムス」の留学プログラムで行きました。当時は、アヤックスとその育成プロジェクト、そしてオランダのサッカーやトレーニングの文化について興味がありました。

-監督になる機会はどのようにして訪れたのですか?

FCバラダーレスで監督としてのキャリアをスタートさせました。おかしな話ですが、オランダに留学していたのに、もうクラブのプレシーズンが始まっていたのです。私が戻ってきたとき、監督が「選手の代わりにアシスタントコーチになりたいか」と尋ねてきました。私は、選手よりもアシスタントコーチとしての方が価値を出せると考えたので、疑いようなく正しい決断でした。翌年、クラブの会長がU-19チームの監督を務めるチャンスをくれました。21歳の私にとっては素晴らしい経験です。その年の終盤に、育成プロジェクトのためトロフェンセ(ポルトガル)に行く招待を受け、2年間をそこで過ごしました。

-その後に、FCポルトの名前が浮上します。どのように招待を受けたのですか?

私がFCポルトに入団したとき、育成プロジェクトの責任者はルイス・カストロ(現シャフタール監督)とビトール・フラーデ教授でした。教授が私に、ルイス・カストロとの面接の機会をくれたのです。なんともない普通の面接プロセスを経て、最終的な決定を待っていました。合格の知らせを受け取った日のことを、まるで今日のように覚えています。すごく意味深いものでした。

-FCポルトでは5シーズンを過ごされました。クラブ内ではどのような役割を果たしていたのですか?

私は、我々の経験や将来に向けた準備の仕方を信じています。その意味で、幸運にも、試合やトレーニングへの知識が豊富で、クラブの文化を重視していた監督たちとともに育成プロジェクトに参画できました。私のFCポルトでの最初の役割は、U-9チーム監督とU-13アシスタントコーチでした。私が初めて全国レベルの大会でアシスタントコーチを務めた監督が、アントニオ・フォーリャ(前SCポルティモネンセ監督)でした。その後、クラブ内で新たに作られた機能や、もっと貢献できる機能について構造的な革新があり、私は監督やアシスタントコーチ、オブザーバーなどを務めました。その経験のおかげで、育成プロセスの全課程や全部門、共通の目的に沿って各部門を関連づけるようなマクロな視点を持つことができたのです。

-その後、FCポルトを退団して、中国の山東魯能に行きましたね。なぜでしょうか?

中国行きの決断には2つの要因がありました。1つ目の要因として、中国ではより経済的に自立でき、より快適に家族との生活や計画を進めることができる状況だったこと。2つ目の要因としては、異なる文化への挑戦、そしてプロジェクトを共に進めたグループによる挑戦でした。

-中国ではどのような役割を果たしましたか?

U-9からU-13までのサイクルにおけるコーディネーターと、同時に、U-15およびU-16チームの監督を務めました。

-その経験をどのように評価しますか?

人間的な観点、また、専門的な観点からも、非常に豊かな経験でした。人間的な視点というのは、異なる文化を持つ人々への理解、我々にとっては重要なことでも彼らにとっては重要ではないことがあるということ。専門的な視点というのは、相対化すること、そして優先事項と付属事項を区別すること。小さな変化が、大きなインパクトを創造できることに気づかされました。

-なぜFCポルトに戻ったのですか?

FCポルトへの復帰は、自然な形で起こりました。私がクラブや組織全体と良い関係を築いていたためです。家に帰るようなものでした。中国では契約の最終年であり、更新しないことは決めていました。ルイ・バロス(現ポルトB監督)とクラブ組織からの招待を受け、彼のテクニカルチームに加わりました。

-FCポルトの育成組織で出会った最高のタレントは誰でしたか?

移籍シーズンが近づいていますので、他クラブについての質問には答えたくありません。誤解を招きたくないので。

-FCポルトに戻ってたった1年で、リパプールの名前が浮上します。それはどのように起こったのですか?

ユルゲン(クロップ)とペパイン(ラインダース)、そしてクラブは、テクニカルチームにおいて、アシスタントコーチとしての役割に加えて、アカデミーとトップチームを強く結び付けられる役割の必要性を感じていました。

-ペパイン・ラインダース氏が監督・コーチとしてあなたに与えた影響はどのようなものですか?

ある人に影響を与える最良の方法は、その人の心に触れることだと信じています。ペパインにはその才があります。彼は試合、トレーニング、そして我々一人ひとりに届く方法について、エネルギーと情熱を持っています。発生している問題について解決策を探すことに秀でており、ときに問題を予期することもあります。彼とまた仕事ができていることは、私にとっては誇りであり大きな喜びです。

-リパプールではどのような役割を果たしていますか?ユルゲン・クロップのアシスタントコーチを務めながら、U-23チームとジュニアチームの選手たちとも仕事をしていますね?

トップチームのアシスタントであることに加え、私の主な目的は、才能豊かな選手、つまり、エリート選手の育成を最大限に促すことです。選手の育成は様々な方法で行われていますが、最も重要なことは、どのように集合体・チームとして試合にアプローチし、どのようにアイデンティティや個人の成長を促すゲームアイディアを構築・開発するかを知ることです。その最たる例がトップチームです。要点を言えば、私の役割は、トップチームとアカデミーにある距離を縮め、U-18チームとU-23チームを、方法論のレベルで、または、我々が基本と考えているゲーム原則のレベルで、トップチームに近づけることです。そして同時に、弱点を再構造化し、細部に対して完璧主義であり、選手が持つクオリティを最大化する点において、選手”個々”についても配慮します。

-エリート選手の育成という仕事は、育成年代の選手に対してのみ行われるのですか?

エリート選手の育成は、トップチームに入る才能があるとクラブが信じている選手に対して適用されます。それは、シニア年代、レンタル移籍中の選手、アカデミーからトップチームへの移行フェーズにある選手などです。

-あなたがユルゲン・クロップに情報を提供し、それに基づいて、その若手選手がトップチームに加わるかどうかを監督が決めるのですか?

テクニカルチームの機能として、すべての決断は共有され、一緒に決定されます。ただ、最初と最後の言葉は、ユルゲンによって発せられます。この件については、私が才能のある選手の育成について責任のある役割を果たしているため、提案はいつも私から発せられます。

-クロップのように、率いるクラブの周囲に素晴らしい環境を作り出せる能力のある監督は少ないように思えます。

クラブ、街、そしてユルゲンの関係性は素晴らしいものです。完全なる共存と言えるでしょう。これは、ユルゲンの個性とカリスマ性、そしてクラブの神秘性と歴史を通じて自然に形成されたものだと思っています。間違いなく、彼は勝利・克服・ハードワーク・完璧主義の文化を築きましたが、それは彼の人となりや、彼が信ずるものと関係しています。

-ユルゲンは人を愛しています。彼は毎日どのように過ごしていますか?

(彼が人を愛することは)クラブでの日常からも感じられます。ユルゲンは、素晴らしく信じられないような人です。彼はたった5分間で、あなたを一緒に世界征服をするよう説得できるような人間です。その性格は、彼の計画にも、エクササイズにも、トレーニングにも、試合にも、講義にも、会話にも、どこにでも感じられます。我々一人ひとりにリーチし、最大限を要求することができるのです。

-何か驚いたことはありますか?

あなたは、彼のインタビューや記者会見、試合を見て彼のイメージを頭に作り上げていますが、ユルゲンはいつでもあなたを驚かすことができます。彼は多くの場合、枠の外で考え、多くの問題を予期できるような人です。

-ペパイン・ラインダースは、「ビトール・マトスはリパプールにとって今季最高の補強だ」と言いました。それを聞いてどう思いましたか?責任感が増しましたか?

いいえ。責任感は受け取った称賛とは無関係であるべきです。全く予期していなかったので、そのような言葉を聞けるのは素晴らしいのは明らかですが、称賛以上に私が追求しているのは、クラブが必要としているすべてに対して貢献し、ハードワークすることです。私は謙虚さ・忍耐力・ハードワークといったものの価値と原則を信じています。サッカーとははかないものであり、そこに残るのは私たちがどの側面にも持つ原則と価値です。ペパインは、そのプロフェショナリズム・情熱・完璧主義から、私にとっては大いなる刺激の源です。その刺激は、私個人として、家族として、そしてプロとして、素晴らしい助けになっています。それこそが、彼が驚くべきほど優れた人間であることを意味しています。

-では、リパプールについてより一般的な文脈での話をしましょう。プレミアリーグでは事実上他のチームはノーチャンスです。チームの成功のポイントは何でしょうか?

すべての始まりは、素晴らしい選手たちです。才能があり創造性のある選手たちが、試合はチームによるものであることを信じており、攻守両面において起こることに対して責任があることを理解しているのであれば、他のチームが注意しなければならないチームになります。クラブとしてより組織的に整備されるほど、ディテールの重要性を感じられる選手が増え、間違いなく彼らは、クラブが選手に対して日々持っている努力・プロフェショナリズム・献身を感じられるようになります。この結束と文化が、今季の成功に大きく関係しています。私たち全員が、週末だけでなく1週間を通じて試合に勝利した気分を感じています。チームの野心・メンタル・才能・そして創造性は素晴らしいものです。

-いまやリパプールは、単なるプレッシング(ゲーゲンプレッシング)と縦に速いだけのチームではありません。より汎用的で柔軟になりました。

それはいくつもの要因が関係しています。そのひとつが、我々のゲームアイディアに則って、選手の特徴を最大化できた方法です。この可変性は、チームが直面する様々な問題に対して、チーム全体で調整が効くように敏感に構築されていることに起因します。全てが、試合のリズムとスペースをどのように管理するかに関係しています。

-クロップがリバプールに来たとき、ララーナは「フィジカル的な要求は増えたが、その努力によって引き起こされた痛みは良いものだった」と言いました。どのように、才能ある選手がこのような姿勢を持つように説得しているのですか?

説得する以上に、要求するのです。我々は基本となるゲーム原則に基づくことを選手たちに要求しており、それがチームの流動性とインテンシティを保証しています。我々は組織のオーガナイゼーションと戦術文化を持たなくてはならないと信じており、ユルゲンはそれを彼の人生と情熱で満たしています。このバランスは基本的なものであり、両方があって機能します。もし確かなことへの情熱しかなければ、これほど規則的で一貫性のあるチームにはならないでしょう。

-リパプールは事実上プレミアリーグの王者です。クラブとして、また街として、Covid-19による中断をどう感じていますか?

我々全員の健康と国の福祉についてこれほどまでに深刻な状況では、率直に言って、他の感情が入り込む余地はありません。ただ、今まで我々が構築してきたすべての過程・プロセスには誇りを感じています。我々はサッカーが戻ってくることを知っていますし、そうなったときに、我々が中断期間前に終えた場所に戻れると信じています。アイデンティティと情熱をもってトレーニングし、試合に臨むでしょう。

-リーグが再開する日にちは未定です。リーグを終わらせることはできると思いますか?

リーグを終わらせるためのいくつものシナリオと解決策があります。その意味で、英国政府、プレミアリーグ、そしてクラブは最善の策を見出すために、常時ディスカッションをしています。現段階で我々がしなければならないことは、自分たちと他人の健康を維持するため、自分たちにできることに集中することです。現時点で最も重要なことです。

-10年後の自分はどこにいると思いますか?

自分が良いと思い、他の人たちも望むところにいるでしょう。我々がいま生きている瞬間は、全てを相対的に見て、私たちにとって最も重要なものの近くに常にいなければならないものです。私がいつも望んでいるものは、私にとっても、家族にとっても、そしてクラブにとっても意味があるものです。

-最後に、あなたが参考にしている監督は誰ですか?

ユルゲン・クロップです

32歳の若さですでに多くのコーチング経験を積み、世界王者リパプールのトップチームとアカデミーを繋ぐ重役を任せられたビトール・マトス。CLを制した翌年、プレミアリーグを敵なしで突き進む最強チームの裏方には、FCポルト時代の同僚であり、ユルゲン・クロップの右腕とも言われるラインダースに「今季最高の補強」と称されたキーマンの存在があった。

©FutePor -ふとぽる-

ポルトのチーム得点王SB、中島翔哉とのエピソードを明かす

『Record』

ポルトのブラジル人LSBアレックス・テレスが、ポルト公式が公開した番組「FC Porto em casa (お家でFCポルト)」に出演。チームの左サイドで共演することも多い中島翔哉とのエピソードを語った。

「僕らが彼(中島)に教えた最初の言葉は、『cansado (疲れた) 』、次に『folga (休み)』だよ。それで(セルジオ・コンセイサオン)監督が、彼のところに行って尋ねたんだ、『それで、ナカ、今日の言葉は何だい?』って。すると彼は答えるんだ、『疲れた』『休みをください』ってね」

「彼は冗談でひとつふたつの言葉を言うけれど、たくさん会話をすることはできない。自分は、チームで一番彼に冗談を言っているうちのひとり。日本語を話そうとチャレンジしてしても、ほとんど何も出てこないけどね。

彼は自分の世界にすごく閉じているよ、否定的に言っているのではなくてね。彼は静かにしている。コミュニケーションが容易ではなく、英語も少ししか話せないからね。僕らは、彼が心地よく過ごせるように務めている。監督もよく彼に冗談を言うし、同様に努めている。デンベレという通訳が、中島には英語で話している。

彼が静かなのは、たぶん彼が僕らの言語を話していたとしても変わらないんじゃないかな。彼のやり方の中では、お茶とケータイを携え、でもピッチの中では、印象的なクオリティを持っている。信じられないものだよ」

アレックス・テレスは、SBながら現在リーグで8ゴールを挙げてチーム得点王に君臨。チェルシーやバルセロナ、パリ・サンジェルマンら強豪クラブが関心を寄せると言われる、まさにチームの中心選手。そんなテレスやセルジオ・コンセイサオン監督のサポートのもと、中島はマイペースながらもピッチ上でその技術を見せつけているようだ。

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公式戦デビューのポルト中島翔哉。「左」サイドでの出場機会増への鍵は「右」サイドにあり!

CL予選クラスノダール戦で、ポルト加入後初の公式戦出場を飾った中島翔哉。4-2-3-1のトップ下としてスタメンデビューを果たし、前半終盤からは選手交代の影響で右サイドハーフとしてプレーした。

トップ下としてプレーした前半の約30分間は、上々のデビューを飾った。相手の中間ポジションでボールを受けて前を向き、右のヘスス・コローナと左のルイス・ディアスらにテンポよくパスを散らし、チームにリズムを与えていた。しかし、チームとして、両サイドがボールを保持しクロスを上げようとした際に、前線のターゲットはワントップのムサ・マレガのみ。ポルトが得意とする空中戦の勝率がツートップ採用時より見込まれないことから、両サイドは自ら持ち込んでシュートを放つシーンが目立った。10本以上放ったシュートは全て空砲に終わり、一方で、少ないチャンスで3得点をものにしたクラスノダールとの決定機創出の機会の差が顕著に表れた。

中島翔哉のトップ下システムにより、リーグ開幕戦ジウ・ビセンテ戦で課題となったボランチまたはディフェンスラインから前線へのビルドアップが分断された課題は概ね解決した。一方で、低身長の中島がゴール前に待ち構えることが増えるため、空中戦の迫力には欠ける。そんなトレードオフに悩まされる前半だった。

ポルトは、前半途中に守備で後手に回っていたRSBレンゾ・サラビアを下げてゼ・ルイスを投入し、ムサ・マレガとの屈強なツートップ布陣を敷いた。それに伴い、右サイドハーフのヘスス・コローナをRSBに配置した。そのため、トップ下の中島は、後半は主に右サイドハーフとしてプレー。コローナとの連携から右サイドを攻略し、ツートップにクロスを届けるタスクを背負った。

中島の右サイドへの配置転換は、トップ下システムよりもうまく機能しなかったのは否めない。もちろん、相手を引きつけてコローナのスペースを空け、また、自身でもドリブルやパスで推進力を出すことには一定成功していた。しかし、右サイドながらほぼ中央で待ち構えることが多くボールに関与する機会は減り、たまに突如ポジションを替えて得意の左サイドに移る様子も目撃された。このような、右サイドの攻略をほぼコローナ1人に任せるポジジョンをとったのは、監督の指示なのか自身の判断なのかは不明。いずれにせよ、独力での突破力が見込めるコローナだとしても、2人に囲まれた際にはサポートに行く判断をすべきだった。また、肝心のクロスがファーを通り越すなど精度を欠き、結果を焦ってか自身も強引なシュートに持ち込み、決定機を逃すシーンも度々見られた。総じて、ポルトガルメディアの論調がそうであったように、中島の公式戦デビューは、良い面も悪い面、どちらも露出した試合となった。

今後、中島翔哉は試合に出場するとすれば、トップ下か右サイドでの起用が多くなると推察する。RSBは、ジル・ビセンテ戦のウィルソン・マナファ、クラスノダール戦のレンゾ・サラビアともに敗戦の戦犯と言われても仕方がないようなパフォーマンスに終始した。今後は、昨季からオプションとして試し、一定の安定感が証明されているヘスス・コローナが起用されるのではないか。そうすると、右サイドハーフは、最も序列の高いコローナの代わりに、中島が起用される機会も増えるだろう。

中島得意の左サイドは、ここまでコロンビア代表ルイス・ディアスが持ち味を出し、クラスノダール戦では切り込んでの豪快なミドルシュートも決めた。守備面でも、縦へのスピードが圧倒的に早くカウンター対策にもなり、中島がクラスノダール戦の2失点目で、相手選手のカウンタースピードに全く追いつけなかったように、スピードではディアスに一日の長がある。また、守備の取りに行く・行かないの判断も良く、若いうちからコロンビア代表としてプレーしているだけあり、個人能力に加えて、サッカー的な頭の良さも備えていることが明らかになった。このディアスの他に、ジル・ビセンテ戦で絶妙なプレーをしたオタービオも控えるため、左サイドのレギュラー争いはなおも熾烈だろう。

トップ下システムは、前述の通りゴール前での迫力に欠けるため、コンセイサオン監督としては、エクトル・エレーラが退団したことで抱えたビルドアップの課題を解決しながら、ツートップで戦いたいのが本心だろう。

そのため、中島はトップ下システムに期待しすぎることなく、今後右サイドハーフとしてもプレーできるようになる必要があると考える。ポルトのサイドハーフは、オタービオも、コローナも、ディアスも、主力の全員が右も左も遜色なくできる。試合中のポジションチェンジを柔軟にできるため、スタメンから起用されやすい。ジル・ビセンテ戦で、オタービオとコローナの左右を入れ替えたように、右サイドハーフで一旦試合に出ていさえすれば、試合の状況によっては左サイドハーフとしてプレーするチャンスも増えよう。

不慣れなサイドで露呈した課題を改善し、まずは「右」サイドでも試合に出場してアピール機会を増やせるか。すでに序列が決まりつつある得意の「左」サイドで中島翔哉がプレー機会を増やす鍵は、今後起用のチャンスが増えるであろう逆サイドにあるのかもしれない。

中島翔哉、上々のポルト公式戦デビュー。ポルトガルメディアも高評価「かつてクライフは言った…」

CL予選3回戦セカンドレグ、ポルトがホームにクラスノダールを迎えた一戦で中島翔哉が公式戦デビューを果たした。チームは前半立て続けに3失点を喫し、後半に2点を追い上げるも同点には至らず。ファーストレグの1-0のリードを活かせずに、アウェイゴールの差でCL予選敗退となった。

1-2で敗れたリーグ開幕戦ジウ・ビセンテ戦では、ボランチから2トップへの距離感が遠く、ビルドアップに苦労したポルト。この日はその反省を活かして、中島翔哉を4-2-3-1のトップ下のポジションで起用。中島は相手選手の合間に顔を出してボールを受け、前を向いて両サイドハーフのヘスス・コローナとルイス・ディアス、ワントップのムサ・マレガに小気味好くパスを配給してチームにリズムをもたらした。チームは前半のうちに、守備で後手に回っていたRSBレンゾ・サラビアを交代させ、FWルイス・ディアスを投入。前半終盤から後半にかけては、中島はRSBの位置に降りたコローナに代わってRSHのポジションでプレー。不慣れなポジションで、ラストプレーの判断や質、RSBコローナとの連携面に課題を見せながらも、チームに推進力を与えた。結果的にフル出場を果たし、上々のデビューを飾った。

ポルトガルメディアも、中島のパフォーマンスについて概ね高評価。『maisfutebol』は、「オリベルは去ったが、”ツバサ”は健在だった。中島の両足は、前半のチームをガイドし、試合を照らす光だった。類稀なる才能の持ち主であることを示したデビュー戦だった。クライフはかつてこう言った。標準的な選手はスペースがあればうまくプレーする。偉大な選手は相手を背後に感じながらも良いプレーをする。中島はまさにその偉大な類だった。敵のプレッシャーを感じることなく、常に顔を上げ、相手の暗い色のユニフォームの間に入り風穴を開けた。全てがうまくいったわけではない、それは明らかだ。時々判断が悪く、いくつかのプレーでは決断を急ぎすぎていた。ただ、デビュー戦とは思えないプレーだった」と、この試合の良かった点・悪かった点を的確に評した。

また、『zerozero.pt』も「あらゆることにトライした。サイドから、中央から、パス、シュートーー。中島はポルトに違いを作り出していた。FWへのロングパスやクロスではなく、相手が予期していないことをして、違いになろうとしていた。全てがうまくいったわけではないが、このチームにおいて、バランスを崩せる選手になり得ることを示した」と、攻撃のアクセントになったことを伝えた。

ポルトは2011年以来、8年ぶりにCLへの出場を逃し、ELへ回る。今後も過密日程が続く中で、貴重な戦力の1人となり得ることを十分に示した一戦となった。

©FutePor -ふとぽる-

【保存版】19-20季、ポルトガル1部全18チームの監督人事を紹介

2018-19シーズンのポルトガルリーグを制したのは、「Bチームの人材」が躍動したベンフィカだった。Bチームから途中就任したブルーノ・ラージュ監督のもと、Bチームから昇格して1年目のジョアン・フェリックスら若手が躍動。シーズン序盤のつまずきを猛烈な勢いで挽回し、首位を独走していたポルトとの熾烈な優勝争いを2年ぶりに制した。

一方のポルトは、CLこそベスト8に進出するも、2連覇を期して臨んだリーグ戦では、ベンフィカ相手にシーズンダブルを許し、タイトルを逃す屈辱。今季は多くの主力選手が退団し、チーム編成も一新する中で王座奪還に挑む。

今季は中島翔哉がカタールからポルトへ、さらには、安西幸輝(ポルティモネンセ)や前田大然(マリティモ)ら若き日本代表世代が中島の成功例の再現を求めてポルトガルへの移籍を決断。中島がポルティモネンセに所属していた昨季よりも、日本におけるポルトガルリーグへの注目度が一層に増すことだろう。新シーズンもベンフィカとポルトを中心にタイトル争いが展開されるであろうポルトガル1部リーグについて、今年も毎年恒例、全18チームの監督名鑑をお届けする。

昨季1位 ベンフィカ:ブルーノ・ラージュ

ブルーノ・ラージュ(続投)

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クラブにジョルジ・ジェズス時代から続くリーグ4連覇(自身2連覇)をもたらしたルイ・ビトーリアをシーズン序盤に途中解任し、Bチームからブルーノ・ラージュを昇格。この大抜擢がベンフィカのシーズンを一変させた。

かのジョゼ・モウリーニョですらポルト優勢と踏んでいた優勝争いを怒涛の連勝で覆し、就任後19181分と驚異的な追い上げを見せ、クラブに2年ぶりのタイトルをもたらした。特にトータルでシーズン103点を叩き出した攻撃陣の躍動は目覚ましく、ナシオナルとの一戦は10-0という衝撃の大勝を飾った。この快進撃は、序盤戦こそ「今季はポルトだろう」と予想していたモウリーニョを、のちに「私が間違っていた」と言わしめるものだった。

今季もクラブは、昨季リーグ戦終盤を無敗で乗り切ったブルーノ・ラージュに指揮を託す。スカッドとしては、2度のリーグ得点王と2年連続の年間MVPなどポルトガルで輝かしいキャリアを積んだジョナスが引退したが、リーグ得点王ハリス・セフェロビッチやランキング3位ラファ・シウバ、アシストキングのピッツィら多くの主力選手が残留。かつては鹿島アントラーズに所属したカイオ・ルーカスもいよいよ今季からチームに合流するなど、既存戦力と新戦力のバランスはよい。インターナショナルチャンピオンズカップでは、ミランやフィオレンティーナなどイタリアの強豪を撃破して優勝を飾り、スポルティングとのスーペルタッサを5-0で完勝するなど、チームの滑り出しは良好だ。監督自身が昨季まで育て上げたジョッタらBチーム出身選手もインパクトを残し、毎年恒例となりつつあるリーグを代表する新星の頭角も期待できる。

リーグ2連覇と昨季は失意に終わった国内カップ戦およびCLでの躍進のためには、トップチームで初めてフルシーズンの指揮を執る監督自身の育成・抜擢の手腕が大きく問われるが、現状チームの出来上がりは極めて順調。今季はこのブルーノ・ラージュが国内のあらゆるタイトル争いをリードすることだろう。

昨季2位 ポルト:セルジオ・コンセイサオン

セルジオ・コンセイサオン(続投)

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古巣ポルトをビトール・ペレイラ期以来5年ぶりのリーグ王者に導いたセルジオ・コンセイサオンだが、2年連続のリーグ優勝を目指した昨季は、ベンフィカにシーズンダブルを許すなど苦難の年に。ベスト8進出と躍進したCLとの両立に苦しみ、終盤はドローが続いて下位クラブから勝ち点を取りこぼした。

それでも、優勝シーズンにジョゼ・モウリーニョの持つクラブ歴代最多勝ち点記録862ポイント多く塗り替えた若き名将への評価は色あせず。心筋梗塞の影響で現役続行が不透明な守護神イケル・カシージャス、守備の要であったエデル・ミリタオン(レアル・マドリード)とフェリプ(アトレティコ・マドリード)、豊富な運動量で長らくチームを支えていたエクトル・エレーラ(アトレティコ・マドリード)、圧倒的な個人技でアクセントを加えていたヤシン・ブライミ(アル・ラーヤン)ら、主力選手が大量に流出し変革期を迎えるチームの再建に挑む。

今季もクラブ伝統の4-3-3と監督が得意とする4-4-2システムを使い分け、手堅く勝負強いサッカーが志向されるだろう。タイトル奪還のためには、CL予選アウェイのクラスノダール戦ではベンチ外となった中島翔哉やレンソ・サラビアら、新戦力の躍動が不可欠。多くのメンバーが入れ替わった今季の成績は、彼ら新戦力のパフォーマンスに直結するため、コンセイサオンのチーム作りには序盤戦から注目が集まる。

昨季3位 スポルティング:マルセル・カイザー

マルセル・カイザー(続投)

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ポルティモネンセ相手に4-2と破れた直後、スポルティングは早々に手を打った。新監督として招聘したジョゼ・ペゼイロは、大方の予想通り平凡な成績に甘んじ、不名誉な「ポルトガル1部リーグ監督交代第1号」となってしまった。

この迅速な判断が吉となり、オランダ人新監督マルセル・カイザーのもとチームは何とか立て直し、リーグ戦は3位と最低限の結果をマーク。カップ戦では、リーグカップとポルトガルカップの2冠に輝き、スーペルタッサとポルトガルカップを戴冠した2007-08シーズンぶりの2タイトルを獲得するなど、近年稀に見る好成績を残した。ただやはり、何としても手中に収めたいのは、2001-02シーズン以来となるリーグタイトルだろう。

カイザーが率いたシーズン後半は、リーグ戦9連勝と怒涛の追い上げを見せ、来季への期待感をにおわせた。ポルト時代のフッキ、ベンフィカで引退を発表したジョナスに続いて、2年連続リーグ年間MVPに輝き、MFながらシーズン32ゴールを記録してアレックス(当時フェネルバフチェ)が保持していたヨーロッパMF歴代最多得点記録を更新するなど、リーグを代表するアタッカーとして君臨したブルーノ・フェルナンデスの移籍動向は気になるところだが、いずれにせよ、20年ぶりのリーグ制覇のためには、この絶対エースに依存しないチーム作りが必要だ。

昨季4位 ブラガ:リカルド・サー・ピント

アベル・フェレイラ(今季:PAOK)

リカルド・サー・ピント(前:レギア・ワルシャワ)

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2017-18シーズンにブラガの歴史上最も多くの勝ち点(75)を稼いだアベル・フェレイラは、昨季もチームを「ポルトガルの4強」の地位にキープさせ、最低限のミッションは達成。2シーズンにわたり安定的な結果を残した手腕が評価され、自身の監督キャリアでは初となる海外挑戦のため、ギリシアのPAOKへと旅立った。

新監督には、ギリシアやベルギーなど国外中位リーグでの実績が豊富なリカルド・サー・ピントを招聘。ポルトガルでの指揮は2015-16シーズン以来となるが、国内での実績は正直なところ乏しい。クラブ史上最高の監督となったアベル・フェレイラの後釜として4強の座を死守できるか。監督にとってもクラブにとっても、試練の1年を迎えるだろう。

昨季5位 ビトーリア・ギマラインス:イボ・ビエイラ

ルイス・カストロ(今季:シャフタール)

イボ・ビエイラ(前:モレイレンセ)

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ビトーリア・ギマラインスをリーグ5位に導いたルイス・カストロは、パウロ・フォンセッカ監督をローマに差し出したウクライナ王者シャフタールの監督に抜擢された。ルイス・カストロが、フォンセッカの後任として監督就任するのは、同監督がポルトで途中解任され、自身がBチームから昇格した2013-14シーズンを想起させる。

後任には、モレイレンセをクラブ史上最高となるリーグ6位に大躍進させたイボ・ビエイラを招聘。43歳の青年監督と単年契約を締結した。ポルト北部ミーニョ地方のライバル関係にあるブラガも、監督を海外リーグに引き抜かれ変化の時期を迎える今季、天敵をリーグ4位の座から引きづり下ろすには絶好のチャンスだ。

昨季6位 モレイレンセ:ビトール・カンペロス

イボ・ビエイラ(今季:ギマラインス)

ビートル・カンペロス(前:ギマラインスB)

2017-18シーズンには、マルコ・シウバが一時代を築いたエストリルを2部に降格させてしまったイボ・ビエイラだが、昨季はモレイレンセでクラブ史上最高の成績を残し、見事に名誉挽回。ポルトガル屈指の強豪ビトーリア・ギマラインスに引き抜かれた。

クラブは後任としてビートル・カンペロスと契約。同監督にとっては、2017-18シーズンにギマラインスBを退団して以来の現場復帰となる。1部リーグでのトップチーム監督経験は、同シーズンにペドロ・マルティンスが解任され後任のジョゼ・ペゼイロが決まるまでの暫定監督として1試合を務めたのみ。経験の浅い監督に率いられる今季、万年降格圏のクラブにとっては、再び順位表の底と睨み合う厳しい1年となるだろう。

昨季7位 リオ・アベ:カルロス・カルバリャウ

ダニエル・ラモス(今季:未定)

カルロス・カルバリャウ(前:スウォンジー)

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サウジアラビアのアル・タアーウンを経て監督就任したジョゼ・ゴメスは、大方の予想通り早々に解任。クラブは、こちらもシャービスで途中解任の憂き目にあったダニエル・ラモスを招聘し、何とか一桁順位はキープした。功労者であるダニエル・ラモスは契約延長せず退任したが、新監督として大物指揮官を抜擢した。

近年はその監督輩出力に優れるリオ・アベ。ヌーノ・エスピリト・サント(ウルバーハンプトン)、ペドロ・マルティンス(オリンピアコス)、そしてミゲウ・カルドーゾ(AEK)。リオ・アベ経由で海外リーグに監督を輸出するケースは、ポルトガルにおける一種のトレンドとなりつつあったが、今季は監督を逆輸入。プレミアリーグなど海外での実績が豊富な名将カルロス・カルバリャウを母国に呼び戻した。

53歳のベテラン監督は、2018-19にプレミアのスウォンジーを退任して以来となる現場復帰。スウォンジー以前には、トルコのベシクタシュやイングランドチャンピオンシップのシェイフィールド・ウェンズディなどで監督を歴任してきた。ポルトガルクラブを率いるのは、2009-10シーズンにスポルティングの監督を務めて以来。自身にとっても、主要タイトルには2007-08シーズンにビトーリア・セトゥバルでリーグカップを戴冠して以来見放されている。

10年ぶりとなる母国ポルトガルへの復帰。海外での経験を還元し、チームをEL圏およびカップ戦タイトル獲得に導くことが使命だろう。それを期待させるに十分な経験値は持ち合わせている。

昨季8位 ボアビスタ:リト・ビディガル

リト・ビディガル(続投)

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ポルトガル期待の若手監督のひとりジョルジ・シマオンはシーズン途中に解任。同監督にとって、ベレネンセス、パソス、シャービスなど中小クラブを度々上位に押し上げてきた成功サイクルは、強豪ブラガに引き抜かれ・その年に途中解任されて以来、なぜか狂い気味。ブラガ時代に続き、シーズン途中で無念の退任となってしまった。

クラブは、昨季途中に招聘したリト・ビディガルに今季もチームを託す。いまや3部相当ポルトガル選手権まで降格してしまったアロウカ時代には、この弱小クラブを5位に導きELでの経験も積んだ監督。リーグ優勝経験のある5クラブの一角として、そろそろ古豪復活を実現させたい。

昨季9位 ベレネンセス:ジョルジ・シラス

ジョルジ・シラス(続投)

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こちらもボアビスタ同様、1部リーグ優勝経験のある5クラブの一角を成す古豪。昨季は近代化を推し進めんと、ポルトガルでは初のケースとなる前衛的なクラブロゴへの刷新に踏み切った。

監督としては、2016-17年に現役引退して以来チームの指揮を任せているジョルジ・シラスが続投。古風なクラブイメージの刷新を主導する旗頭として、就任してはや4年目となる今季、そろそろ「古豪」の呪縛から抜け出すのに一躍買うような結果を残したい。

昨季10位 サンタ・クラーラ:ジョアン・エンリケス

ジョアン・エンリケス(続投)

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2018-19シーズンのポルトガルリーグにとって、サプライズのひとつはサンタ・クラーラの躍進であった。アソーレス諸島に本拠地を置くクラブは、同じ島国クラブ、マデイラ島のナシオナルとともに、昇格組として1部リーグに挑戦。元ポルトガル代表MFコスティーニャに率いられたナシオナルが1年での降格を強いられるなか、サンタ・クラーラは降格圏はおろか一桁順位にあと一歩まで迫る快進撃を見せた。

この実績が評価されたジョアン・エンリケスは、国内屈指の強豪ビトーリア・ギマラインスからの関心も伝えられるなか、今季はクラブへの残留を決断。昨季の快進撃がフロックでないことを証明し、来季以降の飛躍に繋げたい。

昨季11位 マリティモ:ヌーノ・マンタ

プティ(今季:未定)

ヌーノ・マンタ(前:フェイレンセ)

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オランダでの指導経験が豊富な異色のキャリアを持つクラウディオ・ブラガは途中解任。クラブは近年ピンチヒッターの名手となりつつあるプティに助けを請うた。

昨季は無事に残留を果たしたクラブは、契約満了によりプティの退任を発表し、新たにポルトガル国内有数の若手監督ヌーノ・マンタを招聘。しかし、プレシーズンが始まるとプティが練習場に現れ「まだ契約は残っている」と主張。平行線をたどる両者の争いは、終いには裁判沙汰となり、現在も一件落着とはいかないような状況だ。

それでも、新監督がヌーノ・マンタであることに変わりはない。2010-11シーズンにフェイレンセのユース監督に就任して以来、監督として全てのキャリアを同クラブに捧げてきた。2016-17シーズンには、奇しくも今季から率いることとなったマリティモを相手にジョゼ・モッタ監督が敗北・途中解任され、その後任として初のトップチーム監督に就任。最終的には、弱小クラブをリーグ8位へと躍進させ、ポルトガル国内屈指の若手監督として注目を集めた。昨季は愛するクラブで成績不振に陥り無念の途中交代となったが、その手腕への評価は色あせず。上位返り咲きを狙うマリティモと2年契約を締結した。

監督自身にとってもクラブにとっても、今年は名誉挽回を期する勝負の1年。ヌーノ・マンタはここで突出できれば、さらなる国内強豪クラブへのキャリアも拓けるだろう。そのチームの一員として、松本山雅から期限付き移籍で加入した前田大然の活躍にも期待がかかる。

昨季12位 ポルティモネンセ:アントニオ・フォーリャ

アントニオ・フォーリャ(続投)

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ビトール・オリベイラが率いた一昨季に続いて、再び台風の目としてリーグを席巻した。新エースナンバー10番を着用した中島翔哉や、かつてのポルトガルリーグ3年連続得点王ジャクソン・マルティネスらポルトガルリーグを代表するスター選手が各々の個性を存分に発揮。ベンフィカとスポルティングを下し、それぞれルイ・ビトーリアとジョゼ・ペゼイロの2人の指揮官を途中解任に追い込むなど、ビッグサプライズを度々演じる1年を過ごした。

新シーズンもチーム得点王ジャクソン・マルティネスを中心に据え、サイドを起点に素早く敵陣営を切り裂く攻め筋は、ポルトガルリーグで猛威を振るうだろう。プレシーズンから試合に絡んでいる安西幸輝もその一役を担うはずだ。昨季はLSBのウィルソン・マナファがシーズン途中でポルトへ移籍したように、安西にとっても半年間の活躍次第では、さらなるビッグクラブへの道も拓ける。昨季後半からメンバー入りの機会が増えた権田修一が正GKのポジションを奪えるかにも注目だ。

昨季13位 ビトーリア・セトゥバル:サンドロ・メンデス

サンドロ・メンデス(続投)

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昨季途中にアンゴラ国籍のリト・ビディガルからバトンを継いだカーボベルデ国籍のサンドロ・メンデスが今季も続投。同監督は、選手としても、ここセトゥバルで育成時代を過ごし、プロとして10年以上も在籍。引退後とクラブにとどまりユースチームのコーチとしてキャリアを積み重ねた、純血のSadinho(セトゥバルの愛称)だ。自身初となる1部トップチームをシーズン開幕から指揮する今季、愛するクラブを上位に導けるか。クラブの功労者が成績不振で途中解任される様はサポーターも見たくはない。

昨季14位 アービス:アウグスト・イナーシオ

アウグスト・イナーシオ(続投)

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前年にスポルティングとの決勝のすえポルトガルカップを戴冠し、アービスに史上初の主要タイトルをもたらしたジョゼ・モッタと、クラブ首脳陣は降格を避けるためやむなく決別。同監督は公式声明で敬意を表され勇退する形でチームを去った。

今季は、昨季シーズン途中から監督を務めるアウグスト・イナーシオが続投。ギマラインスやマリティモなど国内クラブだけでなく、エジプト、アンゴラ、ギリシア、ルーマニア、イランなど国外での指揮、またスポルティングでジェネラルディレクターを務めるなど、ピッチ内外における経験豊かな64歳の老将にチームを託す。

昨季15位 トンデーラ:ナチョ・ゴンザレス

ペパ(今季:未定)

ナチョ・ゴンザレス(前:デポルティボ)

トンデーラの歴史に名を刻んだ指揮官がついに退任。クラブを最終節に1部残留に導くこと2回、2017-18シーズンには史上最高順位となる11位に押し上げたペパの退団が決定した。

新任には、スペイン人のナチョ・ゴンザレスを抜擢。スペイン国内のみで監督としてのキャリアを積んできた52歳の同監督にとって、同じイベリア半島の隣国といえど初の国外挑戦となる。ただ、トンデーラは昨季も紙一重で残留を達成した弱小クラブ。今季も1部残留が現実的な目標だろう。

昨季21位 パソス・デ・フェレイラ:フィロー

ビトール・オリベイラ(今季:ジウ・ビセンテ)

フィロー(前:コビリャン)

「ポルトガルの昇格王」ことビトール・オリベイラに率いられたパソス・デ・フェレイラは、無事に1年での1部復帰を達成。自身11度目、ポルティモネンセで1部リーグを戦った2017-18シーズンを除くと、2012-13シーズンから6シーズン連続でのミッションを成功させてお役御免となった。

新監督には、現役時代にパソスでCBとしてプレーした経歴を持つフィローを招聘。監督自身にとって、ポルトガル1部リーグで指揮を執るのは初。昨季は2部コビリャンを率いてリーグ6位と何とも言えない成績に終わっていた。かつてはパウロ・フォンセッカ現ローマ監督のもとリーグ3位に輝いたことのある新興クラブの一角なだけに、1年での降格だけは何としても避けたいところだ。

昨季22位 ファマリカオン:ジョゼ・ペドロ・ソウザ

カルロス・ピント(今季:レイソインス)

ジョゼ・ペドロ・ソウザ(前:エバートンアシスタントコーチ)

クラブにとって四半世紀ぶりとなる1部昇格を置き土産に、カルロス・ピント監督は2部レイソインスへ移籍。日章学園高校時代には選手権で優秀選手に選ばれたこともある菊池禎晃が今季よりプレーするクラブで、再び1部昇格に挑む。

新監督ジョゼ・ペドロ・ソウザは、マルコ・シウバの懐刀と言える存在。同監督が現役引退して監督就任したエストリル時代から、スポルティング、オリンピアコス、そしてハル・シティ、ワトフォード、エバートンとプレミアリーグでもアシスタントコーチを務めてきた。ファマリカオンには2009-10シーズンにアシスタントコーチとして在籍した過去があり、古巣復帰が実現する形となった。

マルコ・シウバは、エストリルで2部優勝を飾った翌年から、2年連続でクラブを15位以上に導いたことで、わずか3シーズンで2部監督から名門スポルティングの監督に到達した。恩師のシンデレラストーリーを再現できるか。

昨季3部 ジウ・ビセンテ:ビトール・オリベイラ

ナンディーニョ(今季:未定)

ビトール・オリベイラ(前:パソス・デ・フェレイラ)

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昨季は3部相当ポルトガル選手権を戦っていたジウ・ビセンテ。2006年にポルトガルリーグ規定に抵触する選手起用をしたため勝ち点を剥奪され1部から2部に降格していたが、調停のすえ今季より再び1部に挑む形となった。

そんなクラブを新たに率いるのは、前述の「昇格王」ビトール・オリベイラ。久々の1部挑戦となった2017-18シーズンにはポルティモネンセを率いてリーグを席巻しただけに、今季もダークホース候補として注目だろう。ただし、3部から1部に一段飛ばしでステップアップしただけに、現有戦力でどこまで戦えるか。ポルティモネンセ時代にも限られた戦力で格上の相手を破ってきた監督の自身手腕が大きく問われる。

以上、2019-20シーズンのポルトガル1部リーグを戦う全18チームの監督人事を紹介した。中島翔哉、安西幸輝、権田修一、前田大然ら日本代表選手の活躍ぶりを見るかたわらで、欧州のサッカーシーンで将来中核を担うであろう彼ら未来の名将候補にもぜひ刮目いただきたい。